COLUMN
お役立ちコラム
2020.08.12
リードブレーン株式会社
テーマ:
社外取締役がいることを登記しなければならない場合とは
前回に引き続き、ある会社からいただいた質問に答えていきます。
“平成26年4月、取締役をA、B、C(代表取締役A)として株式会社を設立しました。今回、監査等委員である取締役D、E、F(E、Fは社外取締役)及び会計監査人甲監査法人を新たに選任し、取締役会、監査等委員会及び会計監査人を設置することになりました。この場合、監査等委員である取締役E、Fについては、監査等委員である取締役就任の登記のほかに、社外取締役である旨の登記はしなければならないのでしょうか。”
結論から申し上げると、社外取締役である旨については、原則として登記事項ではありません。しかし、社外取締役の存在が法律上の効果をもたらす場合には、社外取締役の登記をしなければなりません。
旧商法における社外取締役の登記
旧商法では、社外取締役でいる場合には、その旨の登記が義務づけられていません(旧商188②七ノ二)。これは、平成13年12月の商法改正により、定款の定めに基づく契約の方法による社外取締役の責任制限が認められたことにより登記事項とされたものです。しかし、その結果、特に中小企業において登記懈怠の状態となる例が少なくありませんでした。その理由は、社外取締役であるか否かは、社外取締役の条件に当てはまるか否かにより形式的に決められるため、会社や当事者に当該取締役が社外取締役であるとの認識がない場合が多いことによるといわれています。
また、社外取締役である旨について一律に登記事項にする必要性も乏しいともいわれています(相澤哲『一問一等新・会社法』257頁~258頁(商事法務・改訂版、2009年)。
会社法における社外取締役の登記
そこで会社法では、社外取締役である旨は特に事項ではないことを原則とし、社外取締役の存在が法律上の効果をもたらす次の3つの場合のみ、例外として社外取締役の登記を義務づけました。
第1に、特別取締役制度を採用している場合です。この場合、社外取締役が1名以上いることが要件とされている(会社373①二)ため、社外取締役の登記が必要となります(会社911③二十一ハ)。
第2に、監査等委員会設置会社の場合です。監査等委員会設置会社では、監査等委員である取締役は、3人以上で、その過半数は、社外取締役でなければならない(会社331⑥)ため、社外取締役の登記が必要となります(会社911③二十二ロ)。
第3に、指名委員会等設置会社の場合です。指名委員会等設置会社では、指名・監査・報酬委員会の委員の過半数は社外取締役でなければならない(会社400③)ため、社外取締役の登記が必要となります(会社911③二十三イ)。
本事例の場合
本事例においては、社外取締役であるE、Fを監査等委員である取締役として迎えようとしています。この場合、上記の第2の場合に当たり、E、Fについて監査等委員である取締役就任の登記をしますが、それだけでなく、社外取締役である旨の登記も必要となります。
原則として、社外取締役の登記は必要ないですが、例外事項に当てはまるかの確認を忘れず行いましょう。
社外取締役の登記におけるポイント