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2020.07.20

リードブレーン株式会社

テーマ:

自己破産者は取締役に就任できるか?

ある経営者が過去に経営していた会社が倒産した際、連帯保証をしていたため、一緒に自己破産をしたというケースがありました。その経営者が後に別の会社にて取締役に就任することは可能かどうかについて今日は解説したいと思います。結論から言いますと、その経営者が別会社にて取締役に就任することは可能です。

会社法制定前までは不可能

会社法制定前までは、破産手続開始の決定を受け復権していない者は取締役の欠格事由とされていました(旧商254ノ2二)。

破産者は破産財団に属する財産に関して管理処分権を有しないにもかかわらず、会社の取締役となった場合は会社財産の管理処分権を執行することとなってバランスを欠くこと、取締役は株式会社の機関として会社、第三者に対し重大な責任を負担するにもかかわらず、破産者ではその負担能力に欠けることなどがその理由とされていました。

会社法制定後

しかしながら、会社法は破産手続開始の決定を受け、復権していない者を取締役の欠格事由から外しました(会社331①参照)。中小企業では、経営者が会社債務について個人保証することが圧倒的に多いため、万が一、会社が倒産すると、経営者も同時に破産に至る場合がほとんどです。なお、金融機関等に対し、経営者保証に依存しない融資の促進に努めるよう促すとともに、万が一会社が破産した場合にも、本ガイドラインに基づく保証債務の整理を金融機関等に申し出ることにより、保証人たる経営者の同時破産ができる限り回避されるよう策定されたものとして、日本商工会議所及び全国銀行協会が公表する「経営者保証に関するガイドライン」があります。

破産手続開始決定を受けてから復権を得るまでの期間は一般的には3か月から6か月程度とされているところ、破産者となった元経営者の経済的再生をできる限り早期に与えるとの観点や復権を得るまで期間が3か月から6か月程度にすぎないのであれば、その程度の期間に限り取締役の欠格事由としても意味がないのではないかとの批判もあったことなどから会社法は、破産手続開始決定を受け、復権していない者を取締役の欠格事由から外したのです。したがって、こちらの元経営者を取締役に迎えることは可能になります。

ただし、破産手続開始決定を受け復権前の者を取締役に選任することで、取引先や取引金融機関に対する対外的な信用が得られるか、又は従業員に対する関係でも社内的に信用が得られるかといった影響を慎重に考慮すべきと考えます。

なお、破産手続開始決定を受けた後、復権を得ない者は、宅地建物取引業者、旅行業者などの登録を拒否されます(宅地建物取引業法5①一、旅行業法6①六)。

したがって、破産手続開始決定を受け、復権を得ていない者を取締役として迎えることはできても、業法上、これらの人物を宅地建物取引業者又は旅行業者等として登録させることができませんので、この点で留意されたほうがよいでしょう。

最後に

破産後、復権前に取締役に就任することは可能ですが、対外的な信用の部分において厳しい状況にさらされることが予想されます。リスクを取るべきかとても難しい問題ですので十分に検討しましょう。何かご不安な点などありましたらいつでも弊社までお気軽にご相談ください。

 

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