COLUMN
お役立ちコラム
2022.10.13
リードブレーン社会保険労務士法人
テーマ:
10月の労務注目情報
バーチャルオフィスを利用して法人登記する際に気をつけること
バーチャルオフィスとは、オフィスを構えることなくビジネス用の住所や電話番号を利用できるサービスのことです。仕事をするうえでの作業スペースが限定されず、必要なオフィス機能の一部を提供してもらえることから、スタートアップや個人事業主を中心に人気を集めています。またコロナ禍で広まったテレワークはオフィスのあり方を大きく変えました。なかには、オフィスを移転したり、縮小あるいは解約した企業もあります。新たに企業する人たちも、実際のオフィスを構えずにバーチャルオフィスを借りるケースが増えてきました。バーチャルオフィス市場は、これから需要が絶えない分野といえるでしょう。そこで今回はバーチャルオフィスを利用する場合の法人登記における注意点についてご説明します。
バーチャルオフィスとは?
▶ オフィスを必要としない人に法人登記のための住所を貸し出し
バーチャルオフィスを利用するメリットはさまざまですが、法人登記が必要な点が挙げられます。法人登記の際には本店所在地の住所を記載して申請する必要があり、この本店所在地は、自宅や賃貸事務所、レンタルオフィスやシェアオフィス、そしてバーチャルオフィスにすることが可能です。法人登記を行う住所に法的な制限はなく、本店所在地と事業を行うオフィスが別の場合でも問題はありません。したがって、バーチャルオフィスの住所で法人登記しても問題ないことになります。事業内容によっては、パソコン1台でできるなど、作業スペースを必要としない場合もあるでしょう。そのような場合に、オフィスを構えるとなると内見や審査、契約まで時間がかかりますし、月々の家賃は大きな負担となります。時間とコスト面から見ても、オフィスが不要な事業内容であれば、登記用の住所記載を目的として、バーチャルオフィスを利用するのはひとつの選択です。
代表者住所は登記事項として一般公開される
法人の本店をバーチャルオフィスに置くことができるため、名刺やパンフレットに自宅住所を掲載せずに済みます。ただし、代表取締役の住所は登記事項であるため、一般に公開される点に注意しましょう。
複数の会社が同じ住所で法人登記している可能性も
法人登記は、複数の会社が同一の住所を本店所在地として登記することを認めており、法的にも制限がありません。特にバーチャルオフィスの場合、いくつもの会社が本店所在地として同じ住所を登記していることも考えられます。ほかの利用者が同じバーチャルオフィスの住所で法人登記をしている可能性があることを念頭に置いておきましょう。他社と住所が同じだという理由で、金融機関の融資や取引先との契約が不利になることはありませんが、バーチャルオフィスを利用している理由を金融機関や取引先に聞かれたら、事情を含めてきちんと説明できるようにしておきましょう。
違法に運営されているバーチャルオフィスもあるので注意を
バーチャルオフィスは開業届に記載する住所や、法人用の銀行口座を開設する際の住所としても利用できます。ただし違法に運営されているバーチャルオフィスを選ばないように注意が必要です。法令を遵守していないバーチャルオフィスは、個人情報の漏洩や犯罪の踏み台として使われてしまう危険性があります。トラブルに発展する可能性もあるので、利用規約などから安全に利用できることを確認し、契約するようにしましょう。
許認可取得のために物理的な事務所が必要な業種もあるので注意
事業を始めるために必要な許認可取得の際に、物理的な事務所がないと許認可が取得できない業種もあります。たとえば建設業や不動産業などは、『事務所要件』といって、法律で定められた項目を満たす事務所がないと、許認可が取得できません。開業を考えている場合は、事務所の要不要もしっかりと確認、事業にあったバーチャルオフィスの利用法を考えましょう。
適用できる?できない?有期契約社員の定年制度
Q.有期契約にも定年制度を導入できるか?
弊社は60歳定年で、65歳までの再雇用制度を導入しています。若い社員が多いため、今まで定年を迎えた人はいません。しかし、有期契約社員のなかに、もうすぐ定年を迎えようとしている人がいます。この場合、有期契約にも定年制度を導入できるのでしょうか?あるいは契約更新は定年の60歳までとするなどの規定はできるのでしょうか?
A.有期雇用契約とはそもそも一定の契約期間を条件としているため、原則定年の概念はないものといえる
つまり言い換えれば定年まで雇用する義務が無く、契約更新の要件を満たしていなければ年齢に関わらず雇い止めが可能ということになります。有期契約社員に定員を規定すると、反対に雇用の流動性が下がる可能性もあると理解しておきましょう。
期間の定めのある契約社員に定年が必要かどうかを考えましょう
有期契約社員に、定年や雇止め年齢を規定することができないというわけではありません。しかしながら、“有期”とある通り、その社員との労働契約では、もともと期間が定まっています。そこに定年制を導入するというのはそぐわないといえるでしょう。そもそも有期契約とは、長期雇用を前提とした契約です。そこに定年制まで導入してしまっては、その契約は期間の定めのない社員と同じであると扱われてしまう可能性もあります。
これにより、有期契約社員に定年年齢までは雇止めがないという期待が生じると、定年まで雇止めができなくなったり、65歳までの雇用確保措置義務が生じたりします。また、60歳以降雇用(更新)しないと規定することは、60歳以後の継続雇用義務を定めた高年齢者雇用安定法の主旨に反するものです。契約更新の具体的な年齢上限を定める場合は、少なくとも65歳とすることが求められます。どちらにしろ、有期契約の内容に定年や年齢制限を入れると実質無期雇用と判断されますので、避けたほうがよいでしょう。