COLUMN

お役立ちコラム

2020.07.21

リードブレーン株式会社

テーマ:

取締役が任期中に自己破産した場合、どのような対応を取るべきか?

先日あるお客様から以下の質問を頂きました。

”我が社のA取締役は、友人の債務について連帯保証していましたが、その友人が破産したため、A取締役も自己破産申立をせざるを得なくなりました。A取締役は取引先からも信頼されているため、このまま取締役にしておきたいと考えています。可能でしょうか。”

こちら先に結論を言いますと、破産手続開始決定を受け復権してない者は取締役の欠格事由ではありませんが、取締役就任後自己破産した場合には、会社と取締役との委任関係が終了するため、当該取締役はいったん退任することになります。ただし、株主総会を開催して、再度取締役に選任することは可能です。

取締役の欠格事由について

会社法上、破産手続開始決定を受け、復権していない者は取締役の欠格事由とはされていません。

中小企業では、経営者が会社債務について個人保証することが圧倒的に多いため、万が一、会社が破産すると、経家者も同時に破産に至る場合が多いとされています。そこで、破産者の経済的再生をできる限り早期に与えるとの観点から、会社法は、破産手続開始決定を受け、復権していない者を取締役の欠格事由から外したのです。

取締役就任後の破産手続開始決定

一方、株式会社と取締役は委任に関する規定に従うとされています(会社330)。したがって、委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けると委任契約は終了するため(民653二)、取締役が任期中に自己破産申立をした場合には、委任関係の終了を理由として、当該取締役は退任することになります。

その場合、退任した取締役は任務終了後遅滞なくその経過及び結果を委任者である代表取締役選任決議は会社の内部的意思決定であり、代表取締役が被選任者と委任契約を締結することにより後者が取締役に選任される(江頭憲治郎『株式会社法』365頁(有斐閣、第3版、2009年)))に報告しなければなりません(民645)。

退任後の株主総会における選任

しかしながら、自己破産申立により取締役を退任した人物を改めて取締役に選任したいと考える場合、破産手続開始決定を受け、復権していない者であっても取締役の欠格事由から外れていることの反対解釈として、速やかに株主総会を開催して、当該人物を取締役に選任することは可能です。

ただし、当該人物を取締役に改めて選任することにより、取引先や取引金融機関に対する信用を損なうことはないか、又は従業員との関係においても信用を害することはないかなど、慎重に判断すべきでしょう。

なお、「経営者保証に関するガイドライン」は、保証契約の主たる債務者が中小企業で、保証人が個人で主たる債務者たる中小企業の経営者である場合、主たる債務者が破産した場合でも同ガイドラインに基づき保証債務の整理を申し出ることにより保証人たる経営者の破産を回避しうるケースがありますので、保証債務の整理にあたっては同ガイドラインを参照されるとよいでしょう。

任期中に自己破産した場合、一度は退任しますが再度取締役になるチャンスはあります。もし自己破産した場合、焦らずに必要な手立てを一つずつ取りましょう。

 

 

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