COLUMN

お役立ちコラム

2019.09.24

リードブレーン株式会社

テーマ:

【コラム】会社成立後2年以内に業務上必要な財産を購入するには?

会社成立後2年以内に業務上必要な財産を購入するには?

事例

部品を製造販売する株式会社を設立し、会社成立後すぐに、製造工場の敷地と建屋を2,000万円で、また部品の製造に必要な特許権を400万円で、それぞれ譲り受けることはできるのでしょうか。

ポイント

実務解説

会社の事業に必要な財産を、会社成立後2年以内に譲り受けることは、「事後設立」に当たります。

事後設立

当該株式会社の成立後2年以内におけるその成立前から存在する財産であって、その事業のために継続して使用するものを取得するには、その取得の効力発生日の前日までに、株主総会の特別決議により承認を受けなければなりません(会社467①五本文・309②十一)。

その趣旨は、取得する財産が過大評価されて他の株主や債権者が害されること、現物出資や財産引受の規制が潜脱されることを防ぐことにあります。

なお、事後設立の規制は、新設合併・新設分割・株式移転により設立された会社には適用されません(会社467①五本文かっこ書)。

少額の例外

ただし、事後設立の場合には、少額の例外が定められています。

つまり、当該財産の対価として交付する財産の帳簿価額の合計額(取得額)が、当該株式会社の純資産額の5分の1を超えない場合には、上記の株主総会での承認は不要になります(会社467①五ただし書)。

また、この5分の1という割合を下回る割合を当該株式会社の定款で定めた場合には、その定めた割合を超えない場合に、上記の株主総会の承認は不要になります(会社467①五ただし書かっこ書)。

その趣旨は、事後設立の場合はすでに会社が成立して事業を開始しており、事業のために継続して使用する財産を機動的に取得したい要請もあるので、取得額が少額の場合にはこの要請を優先させることにあります。

なお、取得額については、各個の契約について判断されますが、事後設立の規制を潜脱するために意図的に契約を分割した場合には、その全体について判断されるべきです。

本事例において、株式会社の純資産額が1億円であれば、製造工場も特許権も取得額が純資産額の5分の1を超えないため、株主総会の承認は不要となります。

ただし、取得する特許権が当該製造工場で製造される部品の製造において必要不可欠なものであり、製造工場と特許権が密接不可分の関係にあり、いずれも同一の契約相手から取得するような場合であれば、取得額は2,400万円と判断され、株主総会の承認を要すると考えなければならない場合もあり得るでしょう。

 


事後設立は、規制が緩和され検査役の調査が不要になったことにより、設立が容易になりました。しかし、不当な価格での取引があった場合取締役に対して損害賠償などが発生する可能性がありますので気をつけましょう。

ピックアップ