COLUMN
お役立ちコラム
2020.07.22
リードブレーン株式会社
テーマ:
会社の部長は取締役を兼務できるのか?
こちら先日あるお客様からご質問を頂きました。
“当社は、取締役会設置会社ですが、今度の定時株主総会で営業部長であるA氏を取締役に選任したいと考えています。A氏に営業部長職を担当させたまま、取締役に選任しても差し支えないでしょうか。なお、当社が指名委員会等設置会社である場合はどうでしょうか。”
結論から述べますと、指名委員会等設置会社でない限り、株主総会においてA氏に営業部長職を担当させたまま取締役に選任することは可能です。
使用人兼務取締役とは?
使用人兼務取締役とは、取締役であると同時に会社の使用人の地位を兼ねている者をいいます。
会社法上、監査役については使用人との兼務を禁止する規定があります(会社335②)。これは、監査する者とされる者が同一では、監査の実効性が上がらないとされているからです。
これに対し、会社法上、取締役については、指名委員会等設置会社でない限り、監査役のような禁止規定はありません。
実際にも使用人兼務取締役の例は極めて多く、取締役が部長、工場長などの使用人の地位を兼ねる場合が多々見受けられます。
指名委員会等設置会社及び監査等委員会設置会社の場合
指名委員会等設置会社では、取締役は使用人を兼ねることはできません(会社331④)。
なぜなら、指名委員会等設置会社の制度趣旨は、監督と執行の分離を図ることにより、取締役会に監督機関としての役割を重視しているところ、執行役の監督を主たる任務とする取締役が、執行役の指揮命令を受ける使用人を兼ねることにより、指名委員会等設置会社の趣旨に反することとなってしまうからです。
同様に、監査等委員会設置会社における監査等委員である取締役も使用人を兼ねることはできません(会社331③)。
使用人兼務取締役に対する報酬及び給与の支払
使用人兼務取締役に対して、取締役としての報酬と使用人としての給与を支払う場合、使用人分給与についても定款に定めがない場合、株主総会の決議が必要であるか否かについて(会社361)、最高裁判所は、「取締役の報酬額を株主総会で決める際、使用人兼務取締役が使用人として受ける給与は取締役の報酬に含まれない旨明示したうえ、取締役全員の報酬の総額を定め、その具体的配分を取締役会の決定に委ねることは、少なくとも使用人として受けるべき給与の体系が明確に確立しており、かつそれによって給与の支給がされている限り、さしつかえない。」と判断していますので(最判昭60・3・26判時1159・150)、取締役の報酬額についてのみ決議を経れば足ります。ただし、決議に当たっては、当該決議額は使用人兼務取締役の使用人分給与を含まない額であることを明らかにすべきです。
使用人と役員を兼務するメリットは、従業員分の賞与は一定の条件を満たした場合、原則経費とすることができ節税になるということです。また通常役員は雇用保険への加入が認められていませんが、兼務の場合従業員の側面もあるため、雇用保険への加入も可能となります。
まとめ