COLUMN

お役立ちコラム

2019.10.02

リードブレーン株式会社

テーマ:

【コラム】出資の履行の仮装をした発起人等の責任は?

出資の履行の仮装をした発起人等の責任は?

事例

当社設立の発起人のうち、Aの出資が仮装であったことが判明しました。Aに割り当てられた株式に対して失権手続をとりますが、この他にAに対して責任を問うことはできるのでしょうか。また、Aの出資の仮装に関与した取締役がいた場合、その者に責任はあるのでしょうか。

ポイント

実務解説

出資を仮装した発起人Aは、失権手続により設立時発行株式の引受人たる地位を失った後も仮装した払込金額(又は払込金額に相当する現物出資財産)の全額を支払う(給付する)義務を負います(会社52の2①)。また、出資の履行を仮装することに関与した設立時取締役も出資の履行を仮装した発起人と連帯して支払の責任を負うことになります(会社52の2②③)。

発起人の全額払込み及び給付義務

発起人は、設立時発行株式の引受け後遅滞なく、発起人が定めた銀行等の払込取扱場所に払込金額の全額を払い込み、あるいは払込金額の全額に相当する現物出資財産を給付する義務を負っています(会社34①②)。ですから、出資の履行を仮装した発起人がいる場合には、他の発起人は、期日を定め、その期日までに出資を履行しなければならない旨を当該期日の2週間前までに通知する必要があり(会社36①②)、通知を受けた発起人は、その期日までに出資を履行しないと、設立時発行株式の株主となる権利を失います(会社36③)。

 出資の履行を仮装した発起人の責任

改正前会社法では、会社設立時に出資の履行が仮装された場合における発起人の引受担保責任及び払込担保責任の制度を廃止しました(旧商192)。しかし、この改正により、出資の履行が仮装されたまま株式が流通に置かれ、出資の履行を仮装した発起人に不当な利益を得る機会を与えるという弊害が生じました。そこで、改正会社法では出資の履行を仮装した発起人は、失権手続によって失権した場合でも支払(給付)義務を負うことを明確にし(会社52の2①)、この責任は、総株主の同意がなければ免除できないとされました(会社55)。又は重過失で知らなかった株主譲受人は、株主権を行使することはできません(会社52の2⑤)。

出資の仮装に関与した発起人及び設立時取締役の責任

発起人が出資の履行を仮装することに関与した発起人又は設立時取締役として法務省令で定める者(出資の履行の仮装に関する職務を行うなどした発起人及び設立時取締役(会社規7の2))は、会社に対して、出資の履行を仮装した発起人と連帯して支払義務を負い、その職務を行うにつき、注意を怠らなかったことを証明しなければ、責任を免れることができません(会社52の2②③)。

 


見せ金や預合いをした場合、信用度が大変落ちます。一度でもそのような行為に走れば、再び信用を得るのは困難です。資本金があるように見えるのは一時的であり、その後露呈した場合にかかるリスクを考えれば、そのような行為はまずしないことが大前提です。

ピックアップ