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2020.01.24

リードブレーン社会保険労務士法人

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【コラム】職場でありがちなトラブル事例

◇職場でありがちなトラブル事例

ライバル社に便宜と懲戒解雇 懇意の取引先から紹介求められ

出版社で編集業務を担当していたAさんは、取引先の社長さんから新雑誌創刊をサポートするよう依頼を受けました。鋭意、プロジェクトの立上げを図りましたが、自社には対応できるスタッフが見当たりません。

日頃から懸意にしていた取引先にご迷惑をかけるわけにはいきません。苦渋の選択で、事情を説明したうえで、関連分野の経験豊富な同業他社を紹介しました。

ところが、この話が回り回って、自社の社長の耳に達しました。「ライバル会社に便宜を与えた」とカンカンの社長は、懲戒解雇を言い渡しました。

弁明に対して会社側が聞く耳を持たないため、Aさんは紛争調整委員会にあっせんを申請しました。

従業員の言い分

他社を紹介したのは、わが社にとっても重要な取引先にご納得いただき、関係を維持するためです。私自身、何の利益も得ていないし、会社に実損は発生していないはずです。

それなのに、何ら釈明の機会も与えることなく、一方的に懲戒解雇とする処分は明らかに不当です。慰謝料1年分を求めますが、世間相場に沿う金額であればこだわりません。

事業主の言い分

いろいろ複雑な事情があったとしても、上司に一言の相談もなく、顧客にライバル企業を紹介するのは、重大な背信行為というほかありません。

さらに、日頃の勤務態度も不良で、最後の1か月ほど出勤もしていない状況だったので、処分は当然です。金銭補償等に応じる気持ちはさらさらありませんが、本人が「自主退職で処理したい」というのであれば、そのくらいの配慮はやぶさかでありません。

指導・助言の内容

事業主に対して、「従業員の独断先決行為(顧客へのライバル社紹介)のほか、勤務態度不良等の事実も考慮し、懲戒解雇に処したい」という心情は理解できるが、「現実に裁判になれば、懲戒の有効性を立証することが容易な事案ではない」点を説明しました。

そのうえで、「無料のあっせん制度の段階で、円満な解決策を探ったらどうか」とアドバイスしました。

結果

会社側が金銭補償等に応じる意思を示し、退職事由は会社都合とし、賃金の2か月相当額を支払うことで双方が合意しました。


このケースは、実際には会社への実損は無かったとは言うものの、独自の判断だけでは難しかった問題ですね。日頃から社内でのコミュニケーションが密に取れていれば、このような事にはなっていなかったかも知れませんね。いかに、日頃の連携が大切かが改めて感じるケースだったと思います。

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