有給休暇の付与日を4月1日に統一する方法|入社月別の早見表と違法にならない3条件

お役立ちコラム

COLUMN

2026.07.31

リードブレーン株式会社

テーマ:

有給休暇の付与日を4月1日に統一する方法|入社月別の早見表と違法にならない3条件

paid-holiday

有給休暇の付与日を4月1日に統一する運用は適法です。

ただし、厚生労働省の通達が示す3つの条件を満たさなければなりません。
1つでも欠けると違法になります。

本記事では、有給休暇の付与日を4月1日に統一する方法や注意点についてまとめました。
次の4月1日から移行を完了できる状態まで持っていける内容です。

ぜひ最後までご覧ください。

この記事でわかること
  • 4月1日への統一が違法にならない3条件と、自社の運用を30秒で判定する方法
  • 入社月12パターンすべての付与日・付与日数がわかる早見表
  • 見落としやすい年5日取得義務の「ダブルトラック」計算と、就業規則の条文サンプル

※従業員の立場の方は、「有給休暇はいつからもらえる?入社月別に解説」をご覧ください。

有給休暇の付与日を4月1日に統一!違法にならない3条件

有給休暇を統一することについて、法律ではっきり「OK」とは書かれていません。

しかし、厚生労働省の通達では「一定要件に該当する場合は付与日を統一しても差支えない」とされています。
つまり、条件さえ満たせば4月1日への統一は認められます。

厚生労働省の示す条件は、以下の3つです。

条件1:本来の付与日より「前倒し」であること

統一後の付与日は、本来有給休暇が付与される法定基準日と同じか、それより前でなければなりません。
1日でも後ろにずれると違法になります。

気を付けなければならないのは、中途入社者です。

たとえば4月1日基準日の会社に5月に入社した従業員は、入社から11ヶ月後の4月1日が付与日となります。
通常の6ヶ月より遅くなるため、労働条件が不利になり法的問題が生じます。

月途中入社の起算日を動かすのも同様です。
4月10日に入社した場合の法定付与日は10月10日。
月の途中で入社したからといって翌月5月1日を起算日とし、付与日を11月1日とするのは違法です。

認められるのはあくまで「前倒し」だけで、先延ばしは一切認められません。
「10月〜3月入社者への手当てが必ず必要」だということを覚えておきましょう。

条件2:次年度以降も同じ期間以上、繰り上げ続けること

一度前倒しした場合は、次年度以降も新たな付与基準日を設定することになります。
ある年度だけ前倒しするような運用はできません。

たとえば4月1日入社の従業員に入社時10日を付与した場合、翌年4月1日に11日を付与します。
分割付与の場合は入社時に5日と、6か月後の10月1日に5日を付与。
次回は本来の10月1日ではなく、6か月繰り上げて4月1日に11日を付与します。

「一度4月1日に統一したら、その従業員には毎年4月1日に付与し続ける」ということです。

条件3:短縮された期間は「全出勤」として出勤率を算定すること

有給休暇の付与には「出勤率8割以上」という要件があります。
前倒しした分の期間は「全期間出勤したもの」と見なし、出勤率を算定してください。
通達では、斉一的取扱いや分割付与で法定基準日より前に有給休暇を付与することを認めています。

たとえば本来5月1日に付与されるところを4月1日に統一した場合。
短縮された4月1日から5月1日までの期間は「出勤したもの」として出勤率を算定します。
実際には欠勤していた期間でも、計算する際は出勤扱いです。

この処理をせず実出勤日数で計算すると、本来付与すべき従業員に付与しない事態が起こります。

3つの質問に答えるだけ|自社の運用が適切か判定するフローチャート

3条件を、そのまま自己診断に使えます。
以下の3問すべてに「はい」と答えられれば適法です。

判定項目 いいえの場合
Q1
全従業員について、統一後の付与日が法定基準日と同じか、それより前になっていますか?
違法
Q2
2年目以降も、初年度に繰り上げた期間と同じかそれ以上、繰り上げていますか?
違法
Q3
前倒しで短縮された期間を「全出勤」として出勤率を計算していますか?
違法

しかし、3問すべてが「はい」でも、まだ安心はできません。

年5日の取得義務における「ダブルトラック」という別の問題があります。
これは4月1日への統一で必ず発生するもので、違反すると罰則の対象です。

有給休暇の付与日(基準日)とは?基本ルールを解説

ここからは統一の前提となる法定ルールを、表を中心に解説します。

4月1日への統一が適法かどうかは、「法定の基準日」を正確に把握できているかで決まります。
比較する基準がずれていれば、判定そのものが成り立ちません。

原則は「入社6ヶ月後・出勤率8割以上・10日付与」

有給休暇は労働基準法第39条で定められた労働者の権利です。
付与の要件は次の2つで、両方を満たした時点で自動的に権利が発生します。

要件 内容
継続勤務 雇入れの日から6ヶ月間、継続して勤務していること
出勤率 その6ヶ月間の全労働日のうち8割以上出勤していること

この2つを満たすと、最低10日の有給休暇を付与しなければなりません。
会社の裁量ではなく法律上の義務であり、就業規則に定めがなくても発生します。

「継続勤務」は在籍期間を指します。
試用期間中も在籍期間に含まれるため、試用期間を除いて6ヶ月を数えるのは誤りです。

そして、この最初の付与日が基準日となります。
以降の付与サイクルは、原則としてこの日付を起点に1年ごとに進みます。

有給休暇の日数が会社によって違うように見えるのは、法定日数に上乗せしている企業があるからです。
下回ることは認められません。

4月1日入社の法定付与日は10月1日になる

4月1日入社の従業員の場合、法定の基準日は入社から6ヶ月後の10月1日です。
新卒社員も中途社員も同じで、入社日に有給休暇が発生することは法律上ありません。

つまり、4月1日を全社の基準日にすると、この10月1日を6ヶ月前倒しすることになります。

法定より早く付与すること自体は自由であり、違法にはなりません。
福利厚生として入社日に付与する企業もあります。
禁止されているのは、10月1日より遅らせることだけです。

正社員の付与日数(継続勤務年数別)

週所定労働日数が5日以上または週所定労働時間が30時間以上の従業員の付与日数です。
正社員などが該当します。

継続勤務年数 6ヶ月 1年6ヶ月 2年6ヶ月 3年6ヶ月 4年6ヶ月 5年6ヶ月 6年6ヶ月以上
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日
正社員の付与日数のポイント
  • 2年目(1年6ヶ月時点)は11日であり、10日ではない。
  • 3年6ヶ月目から増加幅が2日に変わる。
  • 6年6ヶ月以降は20日で頭打ちとなり、これが1年間の最大日数となる。

有給休暇の有効期限は2年です。
未消化分は翌年度に繰り越せるため、繰り越しを含めた保有上限は40日となります。

パート・アルバイトの比例付与日数

比例付与とは、働く日数や時間が少ない人向けに、所定労働日数に応じた有給休暇を振り分ける制度です。
対象となるのは、週所定労働日数が4日以下、かつ週所定労働時間が30時間未満の従業員。
主にパートやアルバイトが該当します。

労働基準法施行規則第24条の3に基づき、日数が調整されます。

週所定労働日数 年間所定労働日数 6ヶ月 1年6ヶ月 2年6ヶ月 3年6ヶ月 4年6ヶ月 5年6ヶ月 6年6ヶ月以上
4日 169〜216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121〜168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73〜120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48〜72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

判定でつまずきやすいのが「4日以下かつ30時間未満」という2条件の関係です。
片方だけでは比例付与になりません。

勤務形態 判定
週4日・1日8時間(週32時間) 30時間以上のため比例付与にならず、正社員と同じ日数
週5日・1日4時間(週20時間) 週5日のため比例付与にならず、正社員と同じ日数
週4日・1日7時間(週28時間) 2条件を満たすため比例付与
比例付与の計算式

 「通常の労働者の勤続年数に応じた付与日数 × 週所定労働日数 ÷ 5.2日」
※1未満は切り捨て
※5.2という数字は厚生労働省令(労働基準法施行規則第24条の3)で定められた通常の労働者の週所定労働日数です。勤続年数に応じて「通常の労働者の付与日数(10日〜20日)」を当てはめて計算します。

5.2という数字は厚生労働省令で定められた通常の労働者の週所定労働日数です。

なお、年10日以上付与される従業員は年5日の取得義務の対象になります。
週4日勤務の場合、3年6ヶ月時点で10日に到達するため、この時点から義務が発生します。
見落としが起きやすい箇所です。

月途中入社の起算日に注意!4月10日入社を「5月1日起算」にするのは違法

月途中入社者の起算日を翌月1日に揃える運用は、違法です。

斉一的取扱いで認められるのは前倒しのみ。
管理を簡便にする目的であっても、後ろ倒しは一切認められません

たとえば4月10日に入社した場合、法定の付与日は入社日から6ヶ月後の10月10日です。
翌月5月1日を起算日として付与日を11月1日とすると、法定より21日遅れることになります。
起算日を揃えたい場合は、10月10日ではなく10月1日に前倒しで統一する必要があります。

有給休暇を4月1日基準日にした場合|ケース別の付与日と日数

同じ4月1日基準日でも、入社月によって取るべき処理はまったく違います

ここでは、入社月ごとに異なる付与日・付与日数をケース別に解説しました。
自社の従業員を当てはめて、違法になる人がいないか確認してください。

なお、以下は全て週5日勤務の正社員が各月1日に入社し、出勤率8割以上を満たしたケースです。

4月入社の場合(新卒・4月1日入社)

最も扱いやすい入社月です。
選択肢が2つあります。

方法①2回目から前倒しする
  • 初回は法定どおり、入社年の10月1日に10日付与
  • 2回目は、翌年4月1日に前倒しして11日付与(6ヵ月の繰り上げ)
  • 3年目以降は、毎年4月1日に付与が続く
方法②入社日から全額前倒しする
  • 入社日である4月1日に、10日を全額前倒しで付与
  • 翌年4月1日に、11日を付与

1つ目は、初回を法定どおり入社年10月1日に10日付与し、2回目を翌年4月1日に前倒しして11日付与する方法です。
法定の2回目は翌年10月1日ですから、6ヶ月の繰り上げになります。
3年目以降は毎年4月1日に付与が続きます。

2つ目は、入社日である4月1日に10日を全額前倒しで付与し、翌年4月1日に11日を付与する方法です。
これは厚生労働省の通達が斉一的取扱いの例としてそのまま挙げているパターンで、法的に最も安全です。
新卒採用が中心の企業であれば、方法②を選ぶと初年度から全社が4月1日に揃います。

ただし、試用期間中の欠勤も有給休暇で処理される点を考慮する必要があります。

5月〜9月入社の場合

初回を法定どおりに付与し、2回目を翌年4月1日に統一します。
前倒しになるので違法にはなりません。

注意すべきは、初回から2回目までの間隔が入社月ごとに縮んでいくことです。

入社月ごとの付与間隔
  • 5月入社:入社年11月1日に10日、翌年4月1日に11日(間隔5ヶ月)
  • 7月入社:翌年1月1日に10日、翌年4月1日に11日(間隔3ヶ月)
  • 9月入社:翌年3月1日に10日、翌年4月1日に11日(間隔1ヶ月)

9月入社の従業員は、1ヶ月のあいだに合計21日の有給休暇を保有することになります。
適法ですが、人件費と業務調整への影響は小さくありません。
夏から秋にかけて中途採用が多い企業では、事前に試算しておくべき箇所です。

なお、この間隔の短さは年5日取得義務における「ダブルトラック」の直接の原因になります。

10月〜3月入社の場合|不公平が発生しやすいゾーン

10月〜3月に入社した中途社員についても、ルール通り処理すれば問題なく4月1日基準日に統一できます。

10月入社は、法定基準日(入社6ヶ月後)が翌年4月1日と完全に一致するため、前倒しも後ろ倒しも不要で、そのまま全社一斉の4月1日サイクルに乗ります。

11月〜3月入社については、以下の2つの選択肢があります。

選択肢①:初回は法定基準日に付与し、2回目を翌年4月1日に前倒しする

11月入社:翌年5月1日に10日付与 → 翌々年4月1日に11日付与(1ヶ月前倒し)
12月入社:翌年6月1日に10日付与 → 翌々年4月1日に11日付与(2ヶ月前倒し)
1月入社:当年7月1日に10日付与 → 翌年4月1日に11日付与(3ヶ月前倒し)
2月入社:当年8月1日に10日付与 → 翌年4月1日に11日付与(4ヶ月前倒し)
3月入社:当年9月1日に10日付与 → 翌年4月1日に11日付与(5ヶ月前倒し)

初回は法定どおり入社6ヶ月後に付与し、2回目の付与日を直近の4月1日に前倒しします。法定基準日より繰り上げているため完全に適法であり、入社直後に過度な有給を付与するリスクも避けられます。

選択肢②:入社直後の4月1日に初回10日を前倒し付与する

入社から1〜5ヶ月しか経っていない直近の4月1日に、初回10日を全額前倒しで付与する方法です。

3月入社の場合は入社1ヶ月後に10日付与となります。法的には最も手厚い運用ですが、早期退職リスク等を考慮して自社に合うか判断してください。

有給休暇の付与日を4月1日に統一する4つの方法と選び方

4月1日一斉付与の導入方法は、初回付与をどう扱うかで4パターンに分かれます。
異なるポイントは、人件費と管理負荷です。

自社の採用形態に合わないパターンを選ぶと、移行後に運用が破綻します。
ここで見極めてください。

パターンA:入社日に10日を全額前倒し付与する

厚生労働省の通達が斉一的取扱いの例としてそのまま挙げており、法的な安全性が最も高い方法です。
入社日に10日をまとめて付与し、以降は毎年4月1日に付与。
4月1日入社者であれば、入社日と基準日が最初から一致します。

メリット
  • ◎ 管理しやすい
  • ◎ 採用時の訴求材料になる
デメリット
  • △ 有給休暇コストを前倒しで負担しなければならない
  • △ 試用期間中の欠勤も有給休暇を使用される可能性がある
  • △ 付与直後に退職されても返納請求ができない

新卒採用が中心で、離職率が低い企業に向いています。

パターンB:分割付与(入社時5日+6ヶ月後5日)

こちらも通達が明示している方法です。
初年度の10日を分割し、入社時に5日、法定基準日である6ヶ月後に5日を付与します。

ただし、このパターンでは次年度の基準日も同様に6ヶ月繰り上げなければなりません。
4月1日入社なら、本来翌年10月1日の2回目が翌年4月1日となり、11日を付与します。

メリット
  • ◎ 入社直後から一定日数を使える状態にしつつ、コスト負担を抑えられる
  • ◎ 私傷病や忌引きに対応しやすい
デメリット
  • △ 管理が複雑になる(初年度だけ付与が2回発生する)
  • △ 分割の比率を自由に設定できるため、運用がぶれる可能性がある

このパターンでは、運用のぶれを防ぐために社内でルールを固めておく必要があります。
早期付与の要望はあるが、10日全額の前倒しには踏み切れない企業向けです。

パターンC:初回は法定どおり、2回目以降を4月1日に統一する

初回付与は法定の基準日どおりに行い、2回目から4月1日に揃える方法です。
実務で最も多く採用されています。

メリット
  • ◎ 実務で最も多く採用されている
  • ◎ 人件費への影響が最も少ない
デメリット
  • △ 入社月によって1回目から2回目までの間隔が短くなり、ダブルトラックの管理が必要になる

前倒し期間が短くて済むため、人件費や労務リスクへの影響が4パターンの中で最も小さくなります。

5月〜9月入社はもちろん、11月〜3月入社であっても「初回は入社6ヶ月後の法定日に付与し、2回目を直近の4月1日に前倒し付与する」ことで、すべての入社月において完全にパターン名どおり運用できます。

中途採用が多く、コストを抑えたい企業に向いています。

パターンD:年2回統一(4月1日・10月1日)で不公平を解消する

基準日を年2回設ける方法です。
4月から9月入社者は10月1日、10月から3月入社者は翌年4月1日を基準日にします。

メリット
  • ◎ どの月に入社しても、法定の6ヶ月要件を満たした直後に付与が来る
  • ◎ 従業員間の不公平感も最小になる
  • ◎ 管理の負荷が低い
  • ◎ ダブルトラックの発生を大幅に抑えられる
デメリット
  • △ 付与業務が年2回発生する
  • △ 「全社一律4月1日」という分かりやすさが失われる

最大の利点は、どの月に入社しても法定の6ヶ月要件を満たした直後に付与が来る点です。
前倒し幅が最大でも5ヶ月に収まります。
9月入社者が1ヶ月で21日を保有するような極端な事態も起きず、従業員間の不公平感も最小になります。

管理面でも、基準日が2つに固定されるだけなので負荷は低いままです。
年5日取得義務の履行期間も揃うため、後述するダブルトラックの発生を大幅に抑えられます。

デメリットは、付与業務が年2回発生すること。
また、「全社一律4月1日」という分かりやすさが失われることです。

通年採用を行っている企業や、従業員数が多い企業ではこのパターンが最も現実的でしょう。
多くの解説ではAとCしか紹介されていませんが、パターンDも検討する価値はあります。

4パターン比較表|コスト・管理負荷・不公平感の3軸で選ぶ

項目 パターンA
全額前倒し
パターンB
分割付与
パターンC
2回目から統一
パターンD
年2回統一
人件費コスト 小〜中
管理負荷
不公平感 最小
最大前倒し幅 6ヶ月 6ヶ月 5ヶ月 5ヶ月
ダブルトラック 発生しにくい 発生する 発生しやすい 発生しにくい
就業規則の複雑さ
向く企業 新卒中心・低離職率 早期付与を重視 中途中心・コスト重視 通年採用・従業員数が多い

選び方の目安は次のとおりです。

付与日を統一する方法の選び方
  • 新卒一括採用が中心なら、パターンA
  • 中途採用が年間を通じて発生するなら、パターンD
  • コストを最優先し、入社月別の処理分岐を許容できるなら、パターンC
  • 早期付与の要望があり、コストは抑えたいなら、パターンB

有給休暇の「ダブルトラック」に注意!計算方法をわかりやすく解説

4月1日への統一を行うと、「ダブルトラック」という状態がほぼ確実に発生します。
ダブルトラックは罰則の対象であるにもかかわらず、詳しく解説されることはあまりありません。

ここからは、取得義務日数の計算から管理簿の記載まで、実務で完結できる形で解説します。

ダブルトラックとは?

履行期間は「基準日からの1年間」です。
ところが前倒し付与を行うと、この1年が経過する前に次の付与日が来てしまいます。
10日以上の有休付与から1年以内に、さらに10日以上を付与した場合、取得義務とその履行期間が重複します。

この状態がダブルトラックです。
4月1日への統一では、構造上ダブルトラックが確実に起こります。

たとえば4月1日入社の従業員を、初回10月1日・2回目を翌年4月1日に前倒しするパターンCの場合。
1回目の履行期間は10月1日から翌年9月30日まで。
2回目の履行期間は翌年4月1日から翌々年3月31日までです。

翌年4月1日から9月30日までの6ヶ月間が、2つの履行期間に同時に属します。
この期間に取得した1日は、どちらの5日にカウントすべきなのでしょうか?

この重複を簡便に管理するため、特別な計算により取得義務日数を求めることが認められています。
方法は2つです。

取得義務日数の計算方法①:按分する(月数÷12×5)

実務でおすすめなのは、こちらの計算方法です。
2つの履行期間を1本の長い期間としてつなぎ、その全体の長さに応じて日数を設定します。

具体的には、最初に10日を渡した日から数えます。
1年以内に新たに10日渡した日まで進み、さらにそこから1年たつまでの期間を1つの期間として考えます。
この「全体の期間に月数を12で割った数に5をかけた日数」を、期間中に取得させればOKというルールです。

計算式は次のようになります。

(第1の基準日 〜 第2の履行期間の終期)の月数 ÷ 12 × 5 = 取得義務日数
この方法なら、履行期間が1本になるため「どちらにカウントするか」の判断は不要です。
2つの期間それぞれで5日取得させる方法は計算が煩雑になるため、按分のほうが管理しやすくなります。
 
ただし、端数が生じた場合の扱いには注意してください。

切り捨ては認められません。
半日単位の年次有給休暇制度がある企業は0.5日、ない企業は切り上げて1日単位に揃えましょう。

取得義務日数の計算方法②:各期間で5日ずつ取得させる

原則どおり、2つの履行期間それぞれで5日ずつ、合計10日を取得させる方法です。
按分より必要日数が多くなりますが、考え方は単純です。
有給休暇の取得率が高い企業であれば、こちらのほうが説明しやすい場合もあります。

しかし、問題は重複期間の扱いです。
重複する6ヶ月間に有給休暇を取った場合、その日を両方の期間にカウントしてよいのか、という疑問が残ります。

なお、年5日取得義務は「必要な日数を取ること」が求められているだけです。
「その年に発生した有給休暇を、その年のうちに使わなければいけない」という決まりはありません。

そのため、古い付与分から消化されていても義務は満たされます。
管理コストを考えると、特別な事情がなければ①の按分を選ぶのが無難でしょう。

具体的な計算例|1年目10月1日付与→2年目4月1日付与のケース(18ヶ月=7.5日)

最も典型的なケースで計算します。
入社日は4月1日。

初回を法定どおり10月1日に10日付与、2回目を翌年4月1日に前倒しして11日付与するパターンです。

項目 内容
第1の基準日 1年目10月1日(10日付与)
第1の履行期間 1年目10月1日 〜 2年目9月30日
第2の基準日 2年目4月1日(11日付与)
第2の履行期間 2年目4月1日 〜 3年目3月31日
重複期間 2年目4月1日 〜 2年目9月30日(6ヶ月)

前回の付与から1年経つ前に10日以上が付与され、この時点でダブルトラックが発生。
要取得期限は3年目3月31日に更新されます。

新しい要取得日数の計算式は「基準日から要取得期限までの月数 ÷ 12 × 5」です。
18ヶ月 ÷ 12 × 5 = 7.5日となります。

このケースは、1年目10月1日から3年目3月31日までの18ヶ月間に、7.5日を取得すれば義務を満たします。

もう1つ例を見てみましょう。
7月1日入社で入社日に10日を全額前倒し付与し、翌年4月1日に11日を付与したケースです。
この場合の重複を通算した履行期間は21ヶ月となります。

  • 計算式:21ヶ月 ÷ 12 × 5 = 8.75日

通達に基づき、算出された日数に端数が生じた場合は切り上げが必要となるため、義務日数は「9日」となります(半日単位の年休制度がある場合でも、端数0.75日は0.5日を超えるため9日となります)。

前倒し幅が小さいほど通期が長くなり、必要日数も増えます。
「繰り上げ期間」欄が短い従業員ほど、必要日数が大きくなると考えましょう。

年次有給休暇管理簿にはどう記載するか

年次有給休暇管理簿の作成と保存は法律上の義務です。
従業員ごとに作成し、5年間(当分の間は3年間)保存しなければなりません。
記載が義務づけられている項目は「時季」「日数」「基準日」の3つです。

ダブルトラックが発生している場合、この基準日欄が問題になります。

重複期間中は、2つの付与日がどちらも基準日として管理簿に記載されます。
先ほどの例であれば、1年目10月1日と2年目4月1日の両方です。

実務上の記載は次のように整理してください。

記載項目 ダブルトラック発生時の書き方
基準日 第1基準日と第2基準日を併記(例:1年目10月1日/2年目4月1日)
履行期間 通期で記載(1年目10月1日〜3年目3月31日)
取得義務日数 按分後の日数を記載(7.5日)
取得日数 通期の累計で管理

管理簿の様式は自由ですが、通期の履行期間と按分日数を記載する欄を用意しておくと管理がスムーズです。

計算そのものは難しくありません。
難しいのは、これを全従業員分、毎年正確に処理し続けることです。

有給休暇の付与日4月1日に関するよくある質問6選

有給休暇の付与日を4月1日に統一する運用について、よくある質問をまとめました。

Q1.4月1日にリセットされて有給が消えることはある?
A.リセットはされません。
有給休暇の有効期限は付与日から2年です。
未消化分は翌年度に繰り越せるため、4月1日に新たな日数が付与されても前年度の残日数は消えません。

ただし2年を経過した分は時効により消滅します。
繰り越しを含めた保有上限は40日です。

Q2.期の途中で退職する従業員の有給はどうなる?
A.退職予定であっても、退職日前に付与日を迎えた場合は新たに有給休暇の権利が発生します。
従業員が退職日までの取得を希望すれば、会社は認めなければなりません。

また、前倒しで付与した後に退職した場合でも、付与した時点で要件が有効となります。
そのため企業は、有給休暇の返納を請求できません。

Q3.4月入社なら入社してすぐ有給を使える?
A.法律上は6ヶ月後からです。
4月1日入社なら10月1日に10日が付与されます。

ただし会社が前倒し付与を採用していれば入社日から使えます。
自社がどのパターンかは就業規則で確認してください。
前倒し付与は企業の任意であり、義務ではありません。

Q4.2回目の有給はいつ何日もらえる?
A.法定では初回付与日の1年後に11日です。
4月1日に統一している場合は、初回から1年経たずに2回目が来ることがあります。
Q5.基準日を後ろ倒しに変更することはできる?
A.できません。
斉一的取扱いで認められているのは前倒しのみです。

法定基準日より遅い日を付与日に設定すると労働基準法違反となります。
管理を簡便にする目的であっても認められないため、統一する場合は必ず早い側に寄せてください。

Q6.一斉付与にすると人件費はどれくらい増える?
A.増加分は前倒し期間に相当する部分です。
試算式は「対象人数 × 前倒しにより先行して付与される日数 × 1人1日あたりの平均賃金」となります。

まとめ

有給休暇の付与日を4月1日に統一する運用は適法です。
ただし、次の3条件をすべて満たす必要があります。

この記事のポイント
  • 統一後の付与日が、法定基準日と同じかそれより前であること
  • 次年度以降も、初年度に繰り上げた期間と同じかそれ以上を繰り上げ続けること
  • 短縮された期間を全出勤として出勤率を算定すること

加えて、4月1日への統一では年5日取得義務のダブルトラックがほぼ確実に発生します。
按分計算と管理簿への記載まで対応して、はじめて移行完了となります。

まず手をつけるべきは、全従業員の基準日の棚卸しです。
対応漏れには充分注意しましょう。

ピックアップ

CONTACT

お問い合わせ

「ひと・お金・未来」のお悩み解決は、
無料相談から。