COLUMN
お役立ちコラム
2020.07.16
リードブレーン株式会社
テーマ:
取締役に選任された者に欠格事由があった場合はどうなるか?
ある会社の取締役に選任されたAさんが1年前に重要な事項につき、虚偽の記載のある有価証券報告書を証券取引所に提出していたことにより、罰金刑を受けていたことがわかりました。この場合Aさんの取締役選任の効力は無効となるのでしょうか?また、その会社の取締役が3名で構成されている取締役設置会社で、うち1名がAさんの場合、どのように対応が必要なのか皆さんはご存知でしょうか?
重要な事項(例えば経理の状況など)につき虚偽の記載のある有価証券報告書を証券取引所に提出した行為は金融商品取引法197条の2第2号の罪に該当します。したがって、Aさんの行為は会社法331条1項3号の欠格事由に該当し、罰金刑の執行から2年を経過していないAさんの選任は無効となります。
結果会社としては、取締役就任登記を抹消するとともに、後任の取締役を株主総会で選任する必要があります。
取締役の欠格事由を看過した選任の効力
会社法331条1項1号ないし4号は取締役の欠格事由を定めています。会社が欠格事由に該当する者を選任しても、その株主総会における選任決議は決議内容が法令に違反する者として無効となります(会社830②)。
取締役就任登記の抹消
したがって、会社は、当該人物に取締役の業務を行わせることを直ちに辞めさせるとともに、取締役就任登記が行われている場合、その登記も無効となりますので、登記の抹消申請をしなければなりません(商登134①二)。
後任取締役の選任
役員が欠けた場合又は法律若しくは定款で定められた取締役の員数が欠けた場合には、任期満了又は辞任により退任した取締役は後任取締役(一時取締役を含みます。)が就任するまで、なお取締役としての権利義務を有するとされています(会社346①)。
しかしながら、欠格事由に該当するため退任に至った場合はこれに該当しません。そうなりますと、本事例では取締役会設置会社でありながら、3名の取締役のうち、1名が欠けることとなりますので、直ちに後任取締役を選任する必要があります。
取締役の選任は株主総会で行われますので(会社329①)、近日中に定時株主総会が開かれる場合にはその総会で選任し、そうでない場合は臨時株主総会の開催が必要となります。なお、必要があると認める場合には裁判所に一時取締役の選任を申し立てることができます(会社346②)。
ちなみに、取締役会設置会社で取締役が3名しか選任されていない場合は、欠員が生じた場合に備え、補欠取締役を選任しておくという方法も考えられます(会社329③)。なお、監査等委員会設置会社においては少なくとも4名以上の取締役が必要です(会社329②・331⑥)。
取締役に選任されたものに欠格事由があった場合の対応のポイント