COLUMN
お役立ちコラム
2019.09.22
リードブレーン株式会社
テーマ:
【コラム】現物出資が給付されなかった場合は?
現物出資が給付されなかった場合は?
事例
出資総額を700万円として株式会社を設立するのに、発起人Aは現金400万円を出資し、発起人Bは300万円相当の販売用商品を現物出資することとし、定款に記載して認証を受けました。ここで、発起人Bが販売用商品の給付を行わないとき、発起人Aはどのように設立手続を進めたらよいのでしょうか。
ポイント
実務解説
発起人Bが現物出資を履行しないとき、発起人Aは、履行を直接強制するほか、失権手続を採ってBを失権させ、新たに作成した定款に認証を受けて設立手続を進めることになります。
直接強制
発起人Bが定款に記載した現物出資を払込期日又は払込期間内に履行しないときは、発起人Aは、その履行を求めて、民法に従った直接強制(民414①)をすることが可能と解されています。
具体的には、動産引渡の債務名義を得て、強制執行(民執169)を行うことになります。
失権手続
しかし、その販売用商品がなくても会社の目的を達成できるような場合には、直接強制にこだわらず、発起人Bを失権させて設立手続を迅速に進める方が合理的なこともあります。
その場合には、発起人Bに対し、少なくとも2週間の猶予を設けた期日を定め、現物出資を履行するよう通知します(会社36①②)。
そして、期日までに現物出資が履行されないときは、発起人Bは設立時発行株式の株主となる権利が失権しま(会社36③)。
設立手続の更新
失権した発起人Bが、設立時発行株式を1株も引き受けないことになれば、Bは発起人としての要件を欠くことになります(会社25②)。この場合、Bを発起人と記載した定款は維持できなくなります。
あるいは、失権した発起人Bが、あらためて金銭出資や他の現物出資に切り替えて設立時発行株式の一部を引き受けることになった場合でも、Bが販売用商品を現物出資すると記載した定款は維持できなくなります。
しかし、認証を受けた定款の変更は、株式会社の成立前は、現物出資が不当とされた場合か、発行可能株式総数を定める又は変更する場合に限られているので(会社30②)、上記の場合に認証された定款を変更することはできません。したがって、発起人Aは、すでに認証された定款による設立手続を進めることを断念し、新たに作成した定款に改めて認証を受けて設立手続を進めることになります。これを設立手続の更新といいます。