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お役立ちコラム
2023.03.30
リードブレーン社会保険労務士法人
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経営者、人事担当者であれば知っておきたい「年次有給休暇の計画的付与制度」について
厚生労働省が令和3年に発表した就労条件総合調査では、年次有給休暇(以下、年休)の取得率は 56.6%となっており、昭和 59 年以降過去最高となっている。そして年休の計画的付与制度がある企業割合は46.2%(令和2年調査 43.2%)と今後も計画的付与制度の導入を検討する企業が多くなることが予想されます。
そこで今回は「年休の計画的付与制度」について運用時の注意事項を踏まえ解説いたします!
「年次有給休暇の計画的付与制度」とは
「年休の計画的付与制度」とは年休の付与日数のうち5日を超える分については、労使協定を結べば、計画的に休暇取得日を割り振ることができる制度です。
▷活用の効果
年休の計画的付与制度を導入している企業は、導入していない企業に比べ年休の平均取得率が8.6%高くなっており、計画的付与制度の導入は年休の取得促進に有効であると考えられています。
また、アンケート調査によれば、労働者の約3分の2は年休の取得にためらいを感じており、計画的付与制度は前もって計画的に休暇取得日を割り振るため、導入により労働者はためらいを感じることなく年休を取得することができるというメリットもあります。
計画的付与の方法について
計画的に付与をするには以下のような方法があります。
①企業もしくは事業場全体の休業による一斉付与方法・・製造業のように一斉に作業ラインをストップさせて方がいい場合 等
②班・グループ別の交替制付与方法・・流通・サービス業など、定休日を増やすことが難しい企業 等
③年次有給休暇付与計画表による個人別付与方法・・誕生日や結婚記念日など従業員の個人的な記念日を優先的に充てたい場合 等
等企業に合ったさまざまな方法で活用されています。どのような付与の方法を行うかは労使に委ねられており、労使協定に具体的な付与の方法を記載することになっています。
計画的付与の導入例
(パターン1)夏季、年末年始に年休を計画的に付与し、大型連休にする
日本では盆(8月)、暮(年末年始)に休暇を設けるケースが多く、これらの休暇に計画的付与の年休を組み合わせることで、大型連休とすることができ、この方法は①➁の企業もしくは事業場全体の休業による一斉付与方式、班・グループ別の交替制付与方式に多く活用されています。
(パターン2)ブリッジホリデーとして3連休、4連休を設ける
暦の関係で休日が飛び石となっている場合に、休日の橋渡し(ブリッジ)として計画的付与制度を活用し、連休とすることができます。例えば土日祝を休日とする会社で、木曜日に祝日がある場合、金曜日に年次有給休暇を計画的に付与すると、その後の土曜日、日曜日の休日と合わせて4連休とすることができます。
計画的付与を運用する際の注意点
①対象者の決定
従業員の中に育児休業や産前・産後休業を取得することが分かっている、定年等で予め退職することが分かっている従業員がいる場合、計画的付与日が休業日や退職日以降の日になる可能性があります。計画的付与の対象者は労使協定で定めることができるため、 このような従業員は予め計画的付与の対象から外しておくと良いでしょう。
②年休が少ない従業員への対応
計画的付与の方法①のように企業や事業場全体の休業による一斉付与の場合には、 新規採用者等で計画的付与日にはまだ年休が付与されていない従業員が発生することがあります。その際、計画的付与日に休ませることについて無給の欠勤扱いとすることはできないため、一斉の休業日については特別休暇(有給)とする、もしくは、休業手当として平均賃金の60%以上を支払うといった方法で対応する必要があります。
年休の計画的付与は労使協定を結ぶことで成り立つ制度であり、導入時にはいくつかの手続きが必要になります。 また、一度決めた有給の日程は会社都合で変更ができません。 どうしても変更が生じる場合は再度、労使協定の締結が必要になります。また年休を希望する日に取得したい従業員にとっては、自らの意思で取得できる日数が少なくなるため、不満を抱きやすいという課題も存在します。制度導入時には労使間での十分な議論の上、会社側はしっかりと制度について理解することが必要でしょう。