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2019.12.09

リードブレーン社会保険労務士法人

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【コラム】身近な労働法の解説

◇身近な労働法の解説

労基法26条の休業手当

会社の都合により従業員を休業させることがあったときに、使用者の責に帰すべき事由による場合は、労基法に定める休業手当の支払いが必要です。

1.休業手当とは

使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならないとされています(労基法26条)。この規定は、労働者の最低生活保障を趣旨としています。

2.使用者の責に帰すべき事由について

材料不足や資金難など、使用者側に起因する経営、管理上の障害を含みます。例えば、輸出不振や不況等で減産するために一時帰休や自宅待機させた場合などです。

民法536条2項の「債権者の責に帰すべき事由」よりも広いとされています。

3.休業手当の性質

休業手当は、労基法上の賃金ですので、次のように取り扱います。

・計算および支払の方法を就業規則に記載します。

・賃金の支払いの5原則※が適用されます。

※通貨払いの原則、直接払いの原則、全額払いの原則、毎月1回以上の原則、一定期日払いの原則

4.実務の例

・通常の賃金と同様、所定の賃金支払日に支払います。

・就業規則や労働契約により休日と定められている日については、支払い義務はありません。

・就業規則において、休業手当についての記載がない、あるいは労基法よりも労働者に不利な記載をしたとしても、休業手当は強行規定ですので、使用者の責に帰すべき事由による休業に対しては、平均賃金の60%以上の手当を支払わなければなりません。

・遅刻早退で賃金の一部が発生しているときや所定労働時間が短い日などで、その日の賃金が平均賃金の60%に満たない場合には、平均賃金の60%に相当する額と実際に働いた時間に対する賃金の差額を休業手当として支払う必要があります。

・派遣労働者についての使用者の責めに帰すべき事由の判断は、派遣元の使用者についてなされます。

・天災事変等の不可抗力は、使用者の責めに帰すべき事由に該当せず、休業手当の支払い義務はありません。不可抗力とは、①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの2つの要件を満たす場合です。例えば、地震や台風などの天災により、施設・設備が直接的に被害を受けた場合などです。しかし、事業場の施設・設備が直接的な被害を受けていない場合でも、休業について、①および②の要件に該当する場合には、例外的に使用者の責に帰すべき事由には該当しないと考えられます。

・労働安全衛生法に基づき、労働者の健康を配慮して休業させた場合は、使用者の責に帰すべき事由に該当しません。

5.罰則等

休業手当を支払わない場合には、罰則として30万円以下の罰金、また、裁判所から付加金の支払いが命じられる場合があります(労基法120条、114条)

 


「使用者の責に帰すべき事由」以外にも休業が認められる場合がありますので、休業手当の内容をしっかりと把握しておく必要があります。未払いがあった場合には、いかなる理由でも厳しいペナルティが課せられる可能性がありますので注意しましょう。

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