【2026年最新】年金支給額はいくら上がった?改定率1.9%を世帯別に試算|手取りベースで検証

お役立ちコラム

COLUMN

2026.10.05

リードブレーン株式会社

テーマ:

【2026年最新】年金支給額はいくら上がった?改定率1.9%を世帯別に試算|手取りベースで検証

 pension-benefit-amount

結論から言います。
2026年度(令和8年度)国民年金(基礎年金)は1.9%、厚生年金(報酬比例部分)は2.0%引き上げられました。

老齢基礎年金の満額は月70,608円です。
そして、この新しい金額はすでに2026年6月15日の支給分から振り込まれています。

 「ニュースでは『4年連続の増額』と言っていたのに、通帳を見ても増えた実感がない……」
「うちは共働きだから、テレビで見た『夫婦で23万円』は当てはまらないはず。結局いくら増えたの?」

そう感じている方は、決して少数派ではありません。
理由は大きく以下の2つです。

①額面が増えても介護保険料や住民税がそこから差し引かれること。
②物価の上昇に年金の伸びが追いついていないことです。

この記事でわかること
  • 「夫婦で23万円」が当てはまらない共働き・単身・自営業などの世帯で、実際に月いくら増えたのか
  • 「4月改定」なのに4月15日の振込額が増えていなかった理由と、改定後の金額が初めて振り込まれる日
  • 増えたはずの年金が、介護保険料などの天引きと物価上昇でどれだけ目減りしているのか
  • 65歳以上の無職夫婦世帯で月約4.2万円とされる家計の赤字に備えて、今から打てる3つの手

2026年度の年金は上がった|改定率と金額【結論】

「令和8年の年金支給額は結局いくらになったのか」を見ていきましょう。

3行でわかる結論
  • 国民年金(基礎年金)は+1.9%、厚生年金(報酬比例部分)は+2.0%
  • 老齢基礎年金の満額は月70,608円(前年度から+1,300円)
  • 反映されるのは2026年6月15日の支給分(4月分・5月分)から

基礎年金+1.9%・厚生年金+2.0%で4年連続のプラス改定

2026年(令和8年)1月23日、厚生労働省が2026年度の年金額改定を発表しました。
国民年金(基礎年金)部分は前年度から1.9%、厚生年金は2.0%の引き上げです。
これは2023年度以降、4年連続のプラス改定にあたります。

物価が上がり続けるなかで、年金額も名目上は増え続けている状態です。
なぜ基礎年金と厚生年金で0.1ポイントの差があるのか、という疑問を持たれた方もいるでしょう。

これはマクロ経済スライドという調整の仕組みが関係しています。
詳しくは記事後半で解説します。

老齢基礎年金(満額)は月70,608円 ─ 初めて7万円台に

2026年度の老齢基礎年金(満額)は、月額70,608円です。
年額にすると847,300円で、前年度の月額69,308円から1,300円のプラスとなりました。
国民年金の満額が7万円台に到達したのは、これが初めてです。

ここで注意が必要なのは、生年月日によって満額が2種類あるという点です。

  • 昭和31年4月2日以降生まれ:月額70,608円(年額847,300円)
  • 昭和31年4月1日以前生まれ:月額70,408円(年額844,900円)

この差は、令和5年度の年金額改定の際に前者は賃金変動率、後者は物価変動率と、異なる指標で改定されたことが原因です。
その影響が今も続いており、月額でおよそ200円の差として残っています。

なお、これはあくまで保険料を40年間(480か月)すべて納めた場合の「満額」です。未納期間や免除期間がある方の金額は、これより少なくなってしまいます。
ご自身のケースについては次章で詳しく試算します。

夫婦2人のモデル年金は月237,279円(+4,495円)

ニュースで最も大きく報じられたのが、この数字です。
2026年度の標準的な老齢厚生年金の額は月額237,279円。
前年度の232,784円から4,495円のプラスとなりました。

ただし、この金額をそのまま自分に当てはめてはいけません。
モデル年金には、かなり限定的な前提条件があるからです。

モデル年金の前提条件

夫が平均的な収入(平均標準報酬・賞与含む月額換算45.5万円)で40年間就業し、妻はその期間すべて専業主婦であった世帯

夫の厚生年金上乗せ部分 96,063円に、夫婦2人分の老齢基礎年金(70,608円×2=141,216円)を足した合計が237,279円です。

つまり237,279円のうち、約6割は「夫婦2人分の基礎年金」となっています。
共働き世帯、単身世帯、自営業世帯ではまったく異なる結果になるということです。
現在は共働き世帯数が片働き世帯数を上回っているにもかかわらず、モデルの前提は変わっていません。

だからこそ、次章では7つの世帯パターンに分けて試算します。

■2025年度と2026年度の年金額比較

区分(月額) 2025年度 2026年度 差額
老齢基礎年金・満額
(昭和31年4月2日以降生まれ)
69,308円 70,608円 +1,300円
老齢基礎年金・満額
(昭和31年4月1日以前生まれ)
69,108円 70,408円 +1,300円
夫婦2人のモデル年金 232,784円 237,279円 +4,495円

※出典:厚生労働省「令和8年度の年金額改定について」(令和8年1月23日発表)、日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」

なお、年金に上乗せされる年金生活者支援給付金も、物価変動に応じて令和8年度は令和7年度から3.2%の増額改定となっています。

あなたはいくら上がった?世帯・働き方別シミュレーション

ここでは7つのパターンに分けて、2025年度と2026年度でいくら変わったのかを試算します。
ご自身に近いケースを探してみてください。

なお、増額の考え方はシンプルです。

年金の増額を計算する式

増額(月額)= 基礎年金部分 × 1.9% + 報酬比例部分 × 2.0%

老齢基礎年金が満額の方であれば、基礎年金部分は1人あたり一律+1,300円です。
厚生年金の報酬比例部分は、現役時代の収入と加入期間によって増額幅が変わります。

※以下の金額は、厚生労働省が公表した改定率をもとにした当サイトの独自試算です。実際の年金額は加入記録により異なります。正確な金額は年金額改定通知書またはねんきんネットでご確認ください。

①会社員+専業主婦(モデル世帯)

厚生労働省が想定しているパターンです。

■前提条件:夫が平均標準報酬(賞与含む月額換算)45.5万円で40年間就業、妻はその期間すべて専業主婦

内訳(月額) 2025年度 2026年度 差額
夫の報酬比例部分 約94,200円 約96,100円 +約1,900円
基礎年金(2人分) 138,616円 141,216円 +2,600円
世帯合計 232,784円 237,279円 +4,495円

2026年度の年金額は、夫婦合わせて月237,279円。
その内訳は、老齢厚生年金が約96,000円、夫婦2人分の老齢基礎年金が141,216円です。

237,279円のうち約6割を占めるのは、夫婦2人分の老齢基礎年金です。
そのため、「会社員なら1人で月約23.7万円を受け取れる」という意味ではありません。

このモデルは、夫が平均的な収入で40年間働き、妻がその期間すべて専業主婦だった場合の年金額です。
実際の受給額は、それぞれの加入期間や収入、働き方によって異なります。

②共働き夫婦(正社員×正社員/正社員×パート)

共働き世帯では、妻にも報酬比例部分が加わるため、世帯合計はモデル年金を上回るケースが多くなります。

■ケースA:正社員×正社員
夫(厚生年金期間中心・平均収入50.9万円・加入期間39.8年)+妻(厚生年金期間中心・平均収入35.6万円・加入期間33.4年)

内訳(月額) 2025年度 2026年度 差額
夫(報酬比例+基礎) 約173,457円 約176,857円 +約3,600円
妻(報酬比例+基礎) 約132,117円 約134,640円 +約2,523円
世帯合計 約305,574円 約311,433円 +約5,859円

夫婦ともに厚生年金期間が長いケースでは、2人とも老齢厚生年金を受け取るため、標準的なモデル年金より世帯合計が大きくなる場合があります。

■ケースB:正社員×パート
夫(厚生年金期間中心・平均収入50.9万円・加入期間39.8年)+妻(第3号被保険者期間中心・第3号期間28.4年、厚生年金期間6.7年)

内訳(月額) 2025年度 2026年度 差額
夫(報酬比例+基礎) 約173,457円 約176,793円 +約3,400円
妻(報酬比例+基礎) 約76,810円 約78,249円 +約1,439円
世帯合計 約250,267円 約255,042円 +約4,775円

③単身男性(会社員40年)

■前提条件:平均年収550万円で40年間就業

内訳(月額) 2025年度 2026年度 差額
報酬比例部分 約94,900円 約96,800円 +約1,900円
基礎年金 69,308円 70,608円 +1,300円
合計 約164,200円 約167,400円 +約3,200円

参考までに、厚生労働省の統計による男性の厚生年金の平均受給額は月16万9,967円(基礎年金を含む)です。
上記の試算はほぼ平均水準にあたります。

夫婦世帯と比べると、単身世帯の増額は約4,500円ではなく約3,400円にとどまります。
基礎年金が1人分しかないためです。

④第3号被保険者期間中心の女性

会社員として働く期間が短く、第3号被保険者として過ごした期間が長い女性のケースです。

■前提条件:第3号被保険者期間が28.4年、厚生年金加入期間が平均6.7年、厚生年金加入中の平均収入は月26.3万円

内訳(月額) 2025年度 2026年度 差額
報酬比例部分 約9,056円 約9,234円 +約178円
基礎年金 約67,754円 約69,016円 +約1,262円
合計 約76,810円 約78,249円 +約1,439円

厚生労働省の統計によると、第3号被保険者期間が20年以上ある女性の平均的な年金額は、2025年度の月76,810円から2026年度は月78,249円へ。
1,439円増えました。

2026年度の内訳は、基礎年金が69,016円、厚生年金が9,234円です。
第3号被保険者期間が平均28.4年と長い一方、厚生年金の加入期間は平均6.7年、加入中の平均収入は月26.3万円となっています。

⑤自営業・フリーランス(国民年金のみ)

国民年金のみの方には報酬比例部分がありません。
増額は基礎年金部分だけです。

ケース(月額) 2025年度 2026年度 差額
満額(1人) 69,308円 70,608円 +1,300円
満額(夫婦2人) 138,616円 141,216円 +2,600円
平均受給額(1人) 約58,200円 約59,300円 +約1,100円

厚生労働省の統計による国民年金の平均受給月額は5万9,310円で、満額の70,608円には届きません。
未納期間や免除期間がある方が多いためです。

月1,100円の増額は、年間で約13,200円。
物価上昇を考えると、生活実感としてはほぼ変化がないという方が多いはずです。

【早見表】現役時代の年収別・増額シミュレーション

ご自身の状況が上記のどれにも当てはまらない場合は、この早見表をお使いください。
厚生年金の報酬比例部分の月額と増額の目安です。

これに基礎年金(満額なら70,608円・増額1,300円)を足したものが、あなたの年金額の概算になります。

平均年収 加入20年 加入30年 加入40年
300万円 26,400円
(+520円)
39,600円
(+780円)
52,800円
(+1,040円)
400万円 35,200円
(+690円)
52,800円
(+1,040円)
70,400円
(+1,380円)
500万円 44,000円
(+860円)
66,000円
(+1,290円)
88,000円
(+1,730円)
600万円 52,800円
(+1,040円)
79,200円
(+1,550円)
105,600円
(+2,070円)
800万円 70,400円
(+1,380円)
105,600円
(+2,070円)
140,800円
(+2,760円)
1,000万円 88,000円
(+1,730円)
132,000円
(+2,590円)
176,000円
(+3,450円)

※報酬比例部分(月額)と、2025年度からの増額(カッコ内)。2003年4月以降の加入を前提とした概算です。標準報酬月額には上限(65万円)があるため、高年収の方は実際の額が試算より低くなる場合があります。

昨年の年金額改定通知書が手元にある方は、電卓ひとつで正確に計算できます。

  • 基礎年金部分(老齢基礎年金)× 1.019
  • 報酬比例部分(老齢厚生年金)× 1.020

この2つを足した金額が、2026年度のあなたの年金額です。
※ただし、前年の年金額に1.019や1.020を掛けるだけでは、実際の年金額と一致しない場合があります。正確な2026年度の年金額は、日本年金機構から送付される「年金額改定通知書」で確認しましょう。

いつから上がる?4月改定なのに4月は増えない理由

「4月から年金が改定される」と報じられていたのに、4月15日の振込額はまったく変わっていなかった。
そう感じた方は多いはずです。

これは手続きのミスでも、あなただけの問題でもありません。
年金の支払い方には、必ず2か月のタイムラグが生じる仕組みがあるためです。

年金は2か月後払い ─ 4月改定分は6月15日支給から反映

年金は毎月支払われるものではありません。
偶数月の15日に、前月と前々月の2か月分がまとめて振り込まれます。

つまり、4月15日に振り込まれるのは「2月分と3月分」です。
2月分と3月分は2025年度(令和7年度)にあたるため、当然ながら旧料率のまま。
ここに新しい改定額が反映される余地はありません。

改定後の年金額が初めて反映されるのは、4月分と5月分が支払われる2026年6月15日です。
日本年金機構も、2026年4月15日に支払われる年金は2025年度に定められた金額だと示しています。

2026年6月15日に支払われる年金から2026年度の金額になります。
「4月改定」という言葉と「6月から増える」という実感のズレは、ここから生まれています。

2026年度 年金支給カレンダー

言葉だけではわかりにくいので、時間の流れで整理します。

支給日 対象月 適用される年金額
2026年4月15日(水) 2月分・3月分 2025年度の額(据え置き)
2026年6月15日(月) 4月分・5月分 2026年度の額(初反映)
2026年8月14日(金) 6月分・7月分 2026年度の額
2026年10月15日(木) 8月分・9月分 2026年度の額
2026年12月15日(火) 10月分・11月分 2026年度の額
2027年2月15日(月) 12月分・1月分 2026年度の額
2027年4月15日(木) 2月分・3月分 2026年度の額

ポイントは2つあります。

年金支給2つのポイント
    • ◎ 4月15日の振込は増えていなくて正常。制度上そうなっている
    • ◎ 2026年6月15日以降の振込額が、改定後のあなたの年金額

もし6月15日以降の振込額も変わっていないと感じる場合は、次章で解説する「天引き」が原因である可能性が高いです。

2026年度の年金支給日一覧

生活設計のために、支給日を確認しておきましょう。
年金は年6回、原則として偶数月の15日に支払われます。
15日が土日祝日にあたる場合は、その直前の平日に前倒しされます。

2026年度は2回、日付がずれます。

  • 2026年8月:15日が土曜日のため、8月14日(金)に前倒し
  • 2027年2月:15日は月曜日のため、通常どおり

10月15日には年金と同時に、年金生活者支援給付金も振り込まれます。
該当する方は、通帳の記載を確認してみてください。

「上がったのに増えていない」を手取りで検証

ここからが本題です。
6月15日以降も増えた実感がないという方に向けて、額面と手取りの差を検証します。

結論を先にお伝えします。
額面が月4,495円増えても、手取りで残るのは約3,300〜3,900円程度というケースが一般的。

さらに、翌年度にはこの増額分が保険料の上昇で相殺される可能性があります。

額面の増額から引かれる4つのもの

年金は、額面がそのまま振り込まれるわけではありません。
年齢や年金額など一定の条件を満たす場合、以下の保険料や税金が年金からあらかじめ差し引かれます。

介護保険料(原則65歳以上)
  • 後期高齢者医療保険料(75歳以上)または国民健康保険料(65〜74歳)
  • 所得税および復興特別所得税
  • 個人住民税

このうち負担感が大きいのが介護保険料です。
第9期(2024〜2026年度)の65歳以上の介護保険料は、全国平均で月額6,225円。
第8期の6,014円から211円(3.5%)増加しています。

しかもこの金額には非常に大きな地域差があります。
最も高い大阪市は月9,249円、最も低い東京都小笠原村は月3,374円で、その差は約2.7倍にのぼります。

なぜ物価上昇に追いつかない?マクロ経済スライドの仕組み

前章では、額面の増額が保険料や税金で目減りすることを見てきました。
し
かし、実感がない理由はもうひとつあります。

それは、2026年度の年金改定率そのものが、前年の物価上昇率を下回っていることです。

2025年の物価変動率は3.2%でした。
一方、2026年度の年金は、基礎年金が1.9%、厚生年金の報酬比例部分が2.0%の引き上げです。

なぜ、物価が3.2%上がったのに、年金は同じだけ増えなかったのでしょうか。
ポイントは、「賃金」と「マクロ経済スライド」の2つです。

改定率の基準は「物価変動率3.2%」ではなく「賃金2.1%」

年金の改定率は物価変動率と名目手取り賃金変動率のどちらかを使って決まります。
物価だけで決まるわけではありません。

2026年度の改定に使われた指標は次のとおりです。

指標 数値
物価変動率(2025年) +3.2%
名目手取り賃金変動率 +2.1%

ここで適用されたのが、物価上昇が賃金上昇を上回る場合は賃金変動率を使うというルールです。

年金制度を支えているのは現役世代の保険料です。
その現役世代の賃金が2.1%しか伸びていないのに、年金だけを3.2%増やせば、制度の支え手に過度な負担がかかります。
そのため、低いほうの数値が採用される仕組みになっています。

この時点で、3.2%あるはずだった伸びが2.1%まで削られました。
1.1ポイントの差です。

そこからさらに0.2%引かれる仕組み

賃金変動率2.1%が出発点になりましたが、年金額はそのまま2.1%増えたわけではありません。
ここからマクロ経済スライドによる調整が入ります。

マクロ経済スライドとは、2004年の年金制度改正で導入された、給付水準を自動的に調整する仕組みです。
少子高齢化による現役世代の減少や平均余命の伸びを反映させ、年金財政を将来にわたって持続させることを目的としています。

2026年度は、このマクロ経済スライドが4年連続で発動しました。
計算を整理すると、次のようになります。

区分 出発点 調整率 最終的な改定率
国民年金(基礎年金) 2.1% −0.2% 1.9%
厚生年金(報酬比例部分) 2.1% −0.1% 2.0%

基礎年金と厚生年金で0.1ポイントの差が生じているのは、厚生年金にだけ調整を緩和する措置が適用されているためです。
厚生年金の調整率は、次期財政検証の翌年度(令和12年度の予定)まで3分の1に抑えられます。
現役世代・将来世代の給付水準を確保しつつ、厚生年金受給者に不利になりすぎないよう配慮しているのです。

実質的な購買力は約1.3%低下している

ここまでを踏まえて、2026年度に何が起きたのかを整理します。

  • 物価変動率は3.2%上昇した
  • 年金は1.9%しか増えなかった
  • 差し引き約1.3%、年金の実質的な購買力は低下した

これが「4年連続の増額なのに実質は目減り」と報じられる理由です。
名目上の金額は確かに増えています。
しかし、そのお金で買えるモノの量は減っているのです。

老齢基礎年金の満額で考えてみましょう。
月1,300円の増額に対し、物価が3.2%上がっているなら、同じ生活を維持するには月2,200円程度の増額が必要だった計算になります。

約900円分が不足していることになります。
さらに理解しておくべき点があります。
マクロ経済スライドは、年金額が下がる局面では発動しません。

つまり物価が上がっている今のような局面でこそ調整が進み、目減りが起きる構造になっています。
直感的にはわかりにくいのですが、名目額が上がる年ほど、実質的な給付水準は静かに下がっていくのです。

そしてこの調整は、2026年度で終わりではありません。
実質賃金の低下やマクロ経済スライドの継続により、年金額の伸びが物価の伸びに追いつかない状況は今後も続く見込みとされています。

つまり、公的年金だけで現在の生活水準を維持し続けることは、年を追うごとに難しくなっていきます。

では、何ができるのか。
次章で具体的な選択肢を整理します。

実質目減りに備える3つの選択肢

ここまで、2026年度の年金が確かに増えたこと、しかしその増額が保険料と物価上昇に追いつかれている構造を見てきました。

では、私たちに何ができるのでしょうか。

大切なのは、まず自分の数字を正確に把握することです。
平均値やモデル年金ではなく、自分自身の年金額と、必要な生活費。
この2つがわかって初めて、対策の要不要が判断できます。

まずねんきんネットで自分の見込み額を確認する

対策を考える前に、必ずやっておきたいことがあります。
自分の年金額を正確に知ることです。

すでに年金を受け取っている方は、6月に届いた年金額改定通知書に記載されています。
手元にない方も、ねんきんネットに登録すれば、通知書の内容をいつでも画面上で確認でき、PDFで保存や印刷も可能です。

まだ受給前の現役世代の方は、ねんきん定期便かねんきんネットで将来の見込み額を試算できます。
加入記録に漏れがないかも、あわせて確認しておきましょう。

意外に多いのが、転職時の記録漏れや、配偶者の第3号被保険者期間の届出漏れです。
心当たりがある方は、年金事務所で確認する価値があります。

【現実】65歳以上の無職夫婦世帯は月約4.2万円の赤字

自分の年金額がわかったら、次は必要な生活費と照らし合わせます。
総務省の家計調査(2025年平均)によると、夫婦ともに65歳以上の無職世帯の家計は次のようになっています。

項目 金額(月額)
可処分所得(手取り収入) 約22.2万円
消費支出 約26.4万円
不足額 約4.2万円

単身世帯はさらに厳しい状況です。
65歳以上の単身無職世帯では、可処分所得約11.8万円に対して消費支出は約14.8万円で、約3.0万円の不足となっています。

この不足分は、貯蓄を取り崩して埋めることになります。
仮に65歳から90歳までの25年間、月4.2万円の赤字が続くとすれば、必要な取り崩し額は約1,260万円です。

2026年度の増額は月4,495円。
不足額4.2万円に対して、約1割を埋めたにすぎません。

数字を直視すると気が重くなりますが、早く知るほど打てる手は多くなります。
ここからは、現実的な3つの選択肢を整理します。

対策1:繰下げ受給で年金額そのものを増やす

これから年金を受け取る方にとって、最も確実性が高い方法です。

年金の受給開始を65歳より遅らせると、1か月遅らせるごとに0.7%ずつ増額されます。
75歳まで繰り下げれば、最大84%の増額。
しかもこの増額は、生涯にわたって続きます。

受給開始年齢 増額率 月額(満額の基礎年金の場合)
65歳 ― 70,608円
70歳 +42% 約100,263円
75歳 +84% 約129,918円

ただし、損益分岐点を理解しておく必要があります。
繰り下げた期間は年金を受け取れないため、その分を取り戻すには時間がかかります。

  • 70歳まで繰下げ:約82歳で65歳受給開始を追い越す
  • 75歳まで繰下げ:約87歳で追い越す

これは額面ベースの計算です。
税金や社会保険料の増加を考慮すると、分岐点はさらに1〜2年後ろにずれます。
健康状態や貯蓄状況を踏まえて判断すべき制度です。

また、働きながら受給している方は注意が必要。
在職老齢年金によって支給停止されている部分は、繰下げによる増額率の計算対象に含まれません。

対策2:NISA・iDeCoで「自分年金」をつくる

公的年金の実質目減りが続く見通しである以上、公的年金以外の収入源を持つという選択肢も現実味を帯びます。
代表的なのが、税制優遇のある2つの制度です。

NISAは、運用益が非課税になる制度。
いつでも引き出せる柔軟性があり、少額から始められます。
ただし元本保証ではなく、相場によっては資産が減る可能性があります。

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、掛金が全額所得控除の対象になるため、現役時代の所得税・住民税が軽減されます。
ただし原則60歳まで引き出せないという制約があります。

どちらも「必ず増える」制度ではありません。
生活防衛資金を確保したうえで、余裕資金の範囲で検討するのが原則です。

対策3:FPに家計とライフプランを相談する

「自分の場合はどうすればいいのか」がわからない。
そう感じたなら、専門家に相談するのもひとつの方法です。

年金の受給戦略、退職金の受け取り方、保険の見直し、資産の取り崩し方。
これらは互いに影響し合うため、個別に考えると最適解を外しやすい領域です。

ファイナンシャルプランナーへの相談では、こうした要素をまとめて整理できます。
無料相談を提供している事業者も多いため、まずは現状把握を目的に使ってみるのも良いでしょう。

ただし、相談先が金融商品の販売を目的としている場合もあります。
その場で契約せず、いったん持ち帰って検討する姿勢を持っておくことをおすすめします。

年金額改定通知書はいつ届く?届かないときの対処法

「増額の通知が来たはずだが、どこにやったかわからない」
「そもそも届いていない気がする」
年金額を確認しようにも、肝心の通知書が見当たらないという方もいるでしょう。

ここでは、通知書がいつ届くのか、どこを見ればいいのか、なくした場合はどうすればいいのかを整理します。

令和8年度は6月3日〜10日に順次発送された

日本年金機構は、「年金額改定通知書」と「年金振込通知書」を、令和8年6月3日(水)から6月10日(水)にかけて順次発送しました。
ここには、令和8年4月分からの年金額が記載されています。

6月15日の支払いに向けて、原則として2つの通知書が一体となった形で送られています。
送付の形式は、受給状況によって異なります。

送付形式
  • 年金と年金生活者支援給付金を同時に受給している方:それぞれの通知が一つにまとまった大判はがき
  • 遺族年金受給者、複数の年金を受給している方、視覚障害による障害年金受給者:封筒

「はがきを探していたが、実は封筒で届いていた」というケースもあります。
心当たりのある方は、6月に届いた郵便物を確認してみてください。

なお、ねんきんネットに登録していれば、令和8年6月9日(火)から画面上で内容は確認可能。
PDFでの保存や印刷も可能です。
紙の通知書が見当たらない方には、こちらが最短ルートになります。

また、国家公務員共済組合連合会(KKR)など、共済組合から年金を受け取っている方は送付元が異なります。
KKRの場合、令和8年6月8日(月)に発送されています。

「年金額改定通知書」と「年金振込通知書」の違い

一体で届くため混同されがちですが、この2つはまったく役割が違います。
知りたい情報がどちらに載っているかを押さえておきましょう。

通知書 記載内容 わかること
年金額改定通知書 改定後の年金額(額面) いくらに増えたか
年金振込通知書 支給額・控除額・振込額・振込予定 実際にいくら振り込まれるか

「増額の実感がない」という方が本当に見るべきなのは、年金振込通知書のほうです。
年金振込通知書には、6月から翌年4月までの振込スケジュールと、各回の手取り額が記載されています。
ここを見れば、額面と手取りの差が一目でわかります。

年金額改定通知書は、年金額の改定があった場合に、原則として6月の定期支給日前に送付されます。
改定がない年は届かないこともあります。

2026年の年金支給額に関するよくある質問

Q. 2026年に年金はいくら上がった?
A. 国民年金(基礎年金)が前年度比1.9%、厚生年金(報酬比例部分)が2.0%の引き上げです。
老齢基礎年金の満額は月70,608円となり、前年度の69,308円から1,300円増えました。
夫婦2人のモデル年金は月237,279円で、4,495円の増額です。
Q. 6月からの年金はいくら増える?
A. 年金は2か月後払いのため、2026年6月15日に支払われるのは4月分と5月分です。
この支給分から改定後の金額が反映されます。
増額幅は加入状況によって異なり、老齢基礎年金が満額の方であれば1人あたり月1,300円です。
Q. 2026年4月に年金はどうなった?
A. 2026年4月15日に振り込まれたのは2月分と3月分のため、金額は2025年度のまま据え置きです。

改定後の4月分・5月分は、原則として6月15日に支払われています。

Q. 令和8年の年金増額はいくら?
A. 老齢基礎年金が満額の方で月1,300円(年額15,600円)です。
厚生年金を受け取っている方は、報酬比例部分の2.0%が上乗せされます。
ご自身の増額分は、昨年の年金額改定通知書の基礎年金部分に1.019、報酬比例部分に1.020を掛けることで概算を計算できます。
Q. 年金額改定通知書はいつ届く?
A. 令和8年度は、6月3日から6月10日にかけて順次発送されました。
年金額改定通知書と年金振込通知書が一体となった形で届きます。
ねんきんネットに登録していれば、6月9日から画面上で確認可能。
紛失した場合はねんきんネットのほか年金事務所の3つの方法で再交付を申請できます。
Q. 申請しないともらえない年金はある?
A. あります。
代表的なのが年金生活者支援給付金です。
低所得の年金受給者に年金へ上乗せして支給される制度で、令和8年度は前年度から3.2%の増額改定となりました。
ただし請求手続きをしていないと、対象であっても支給額はゼロです。
心当たりのある方は、お住まいの市区町村窓口または年金事務所にご相談ください。
なお、「年金受給者に10万円給付」といった情報を見かけることがあります。
しかし、これは過去の臨時給付金や住民税非課税世帯向けの給付金と混同されているケースが大半です。
詳しくは別記事で解説しています。
Q. 2026年の年金改正で何が変わった?
A. 最も影響が大きいのは、在職老齢年金の支給停止基準額が月51万円から65万円に引き上げられたことです。
働きながら年金を受け取る方は、これまで支給停止されていた分を受け取れるようになったケースがあります。
あわせて、加給年金がカットされなくなる場合もあります。

まとめ|2026年度の年金改定で押さえる3点

2026年度(令和8年度)の年金について、最後に要点を整理します。

2026年度の年金改定で押さえる3点
  1. 年金額は4年連続で増額。基礎年金は1.9%、厚生年金の報酬比例部分は2.0%引き上げ
  2. 2026年度の年金額は4月分から改定され、6月15日の支給分から反映
  3. 年金額は増えたものの、2025年の物価上昇率3.2%には届かず、実質的な価値は低下

2026年度の年金は確かに上がりました。
ただし増額幅は人によって大きく違う

国民年金は1.9%、厚生年金は2.0%の引き上げで、4年連続のプラス改定です。
ただし報道された「夫婦で月23万7,279円」は専業主婦世帯を前提としたモデルにすぎません。
共働き、単身、国民年金のみといった世帯では、増額は月1,900円〜5,800円程度と幅があります。

4月改定でも、実際に反映されるのは2026年6月15日の支給分から。
さらに額面の増額からは介護保険料・後期高齢者医療保険料・所得税・住民税が差し引かれます。
手取りで残るのは、増額分の約4分の3程度です。

さらに物価上昇率3.2%に対し、年金の伸びは1.9%。
マクロ経済スライドによる調整で、実質的な購買力は約1.3%低下しています。
この構造は2027年度以降も続く見込みです。

まずやるべきことは、自分の正確な数字を知ることです。
年金額改定通知書、またはねんきんネットで、額面と手取りの両方を確認してください。

そのうえで、家計調査が示す月4.2万円の不足(夫婦世帯の場合)とご自身の状況を照らし合わせ、必要であれば早めに手を打ちましょう。
焦って動く必要はありませんが、知らないまま過ごすことのリスクは年々大きくなっています。

ピックアップ

CONTACT

お問い合わせ

「ひと・お金・未来」のお悩み解決は、
無料相談から。