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2026.02.04
リードブレーン株式会社
テーマ:
社会保険料は4月から6月で決まる!残業すると損?対策を徹底解説

「あれ?今月の手取り、先月より減ってない?」
9月や10月の給与明細を見て、こんな疑問を感じたことはありませんか?
実は、毎月の給与から天引きされる社会保険料は、4月・5月・6月の給与をもとに1年間の金額が決まる仕組みです。
そのため「4〜6月に残業すると損する」という話を聞いたことがある方も多いでしょう。
結論から言うと、これは半分本当で、半分は誤解です。
確かに4〜6月に残業代が増えると社会保険料は上がります。
しかし、その分だけ傷病手当金や将来の年金が増えるメリットも。
「損」と決めつける前に、まずは仕組みを正しく理解することが大切です。
この記事では、以下の内容をわかりやすく解説します。
- なぜ4〜6月の給与で社会保険料が決まるのか(定時決定・標準報酬月額の仕組み)
- 残業すると年間いくら社会保険料が増えるのか【具体的なシミュレーション】
- 当月払い・翌月払いで「注意すべき月」が違う理由
- 社会保険料を抑えるための具体的な対策
- パート・アルバイト、産休・育休中の方への影響
会社員の方はもちろん、パートで働く方、人事・経理担当者の方まで役立つ情報をまとめました。
ぜひ最後までご覧ください。
社会保険料が4月から6月の給与で決まる仕組みとは?
「社会保険料は4〜6月の給与で決まる」と聞いても、具体的にどのような仕組みなのかわからない方も多いのではないでしょうか。
社会保険料の基本から、なぜ4〜6月が重要なのかまで順を追って解説します。
社会保険料とは?給与から引かれる3つの保険料
毎月の給与明細を見ると、「控除」の欄にいくつかの保険料が記載されています。
このうち、4〜6月の給与で金額が決まるのは以下の3つです。
| 保険料 | 内容 | 対象者 |
|---|---|---|
| 健康保険料 | 病気やケガの医療費を補助 | 被保険者 |
| 厚生年金保険料 | 将来の年金の原資 | 被保険者 |
| 介護保険料 | 介護サービスの費用を補助 | 40歳以上 |
これら3つの保険料は、後述する「標準報酬月額」をもとに計算されます。
一方、雇用保険料は毎月の給与額に保険料率をかけて計算する仕組みです。
そのため、4〜6月の給与とは関係ありません。
給与明細を確認する際は、この違いを覚えておきましょう。
「定時決定」とは?年1回の見直しタイミング
社会保険料の金額は、、毎年1回「定時決定」というタイミングで見直しが行われます。
定時決定の流れは以下のとおりです。
- 4月・5月・6月に支払われた給与の平均額を算出
- 会社が7月1日〜7月10日に「算定基礎届」を年金事務所に提出
- 届出をもとに新しい「標準報酬月額」が決定
- 9月分から新しい社会保険料が適用(翌年8月まで1年間固定)
つまり、たった3ヶ月間の給与が、その後1年間の社会保険料を左右することになります。
この仕組みがあるため、「4〜6月は残業しない方がいい」と言われるのです。
「標準報酬月額」とは?等級で区切られた報酬の基準
社会保険料を計算する際、実際の給与額をそのまま使うわけではありません。
給与額を一定の幅で区切った「標準報酬月額」という基準に当てはめて計算します。
標準報酬月額の等級区分
| 保険の種類 | 等級数 | 金額の範囲 |
|---|---|---|
| 健康保険 | 50等級 | 58,000円〜1,390,000円 |
| 厚生年金 | 32等級 | 88,000円〜650,000円 |
例えば、4〜6月の給与平均が25万円の場合。
標準報酬月額は26万円(20等級)に該当します。
この標準報酬月額に保険料率をかけて、毎月の社会保険料が決まります。
計算式
社会保険料 = 標準報酬月額 × 保険料率 ÷ 2(労使折半)
等級が1つ上がるだけでも、年間で数万円の負担増になることがあります。
4〜6月の給与がどの等級に該当するかが、手取り額を左右する重要なポイントです。
標準報酬月額に含まれるもの・含まれないもの
標準報酬月額を算出する際の「報酬」には、基本給以外にもさまざまな手当が含まれます。
何が含まれて、何が含まれないのかを正しく理解しておきましょう。
- 基本給
- 残業代(時間外手当)
- 通勤手当(定期代)
- 住宅手当
- 役職手当
- 家族手当
- 皆勤手当
- 年3回以下の賞与(ボーナス)
- 結婚祝金・出産祝金
- 出張旅費・交通費の実費精算
- 退職金
- 傷病手当金・休業補償
注意すべきポイントは、通勤手当(定期代)も報酬に含まれる点です。
4〜6月に6ヶ月分の定期代がまとめて支給されると、標準報酬月額が上がる可能性があります。
また、年4回以上支給される賞与は「報酬」に含まれるため、支給回数が多い会社は注意が必要です。
4月から6月に残業すると社会保険料は上がる?【シミュレーション】
4〜6月に残業すると、実際にいくら負担が増えるのか気になる方も多いでしょう。
ここでは、具体的な数字を使ってシミュレーションを行い、残業代が社会保険料に与える影響を解説します。
残業代が社会保険料に与える影響を計算してみた
まずは、4〜6月に残業代が増えた場合。
- 勤務地:東京都
- 加入保険:全国健康保険協会(協会けんぽ)
- 年齢:40歳未満(介護保険料なし)
- 保険料率:令和7年度(健康保険9.91%、厚生年金18.3%)
- 基本給:20万円(残業なしの場合)
【ケース】4〜6月に毎月5万円の残業代が発生した場合
| 項目 | 残業なし | 残業あり(+5万円/月) |
|---|---|---|
| 4〜6月の平均給与 | 20万円 | 25万円 |
| 標準報酬月額 | 20万円(17等級) | 26万円(20等級) |
| 健康保険料(月額) | 9,910円 | 12,883円 |
| 厚生年金保険料(月額) | 18,300円 | 23,790円 |
| 合計(月額) | 28,210円 | 36,673円 |
| 差額(月額) | – | +8,463円 |
| 差額(年額) | – | +101,556円 |
※保険料は労使折半後の自己負担額
このケースでは、4〜6月の残業代が月5万円増えたことで、年間約10万円も社会保険料の負担が増えます。
標準報酬月額が3等級上がっただけで、これだけの差が生まれるのです。
【早見表】標準報酬月額別・社会保険料の目安
自分の標準報酬月額だと、社会保険料がいくらになるのか気になる方も多いでしょう。
以下は、東京都・協会けんぽ・40歳未満の場合の早見表です(令和7年度)。
| 標準報酬月額 | 等級 | 健康保険料 | 厚生年金保険料 | 合計(月額) |
|---|---|---|---|---|
| 20万円 | 17等級 | 9,910円 | 18,300円 | 28,210円 |
| 22万円 | 18等級 | 10,901円 | 20,130円 | 31,031円 |
| 24万円 | 19等級 | 11,892円 | 21,960円 | 33,852円 |
| 26万円 | 20等級 | 12,883円 | 23,790円 | 36,673円 |
| 28万円 | 21等級 | 13,874円 | 25,620円 | 39,494円 |
| 30万円 | 22等級 | 14,865円 | 27,450円 | 42,315円 |
| 34万円 | 24等級 | 16,847円 | 31,110円 | 47,957円 |
- ◎ 標準報酬月額が2万円上がるごとに、月額約2,800円の負担増
- ◎ 年間に換算すると約33,600円の差
- ◎ 等級の境目に近い場合、少しの残業代で等級が上がる可能性あり
自分の給与がどの等級に該当するかは、全国健康保険協会や日本年金機構のホームページで確認できます。
残業時間別シミュレーション(月10時間・20時間・40時間)
次に、残業時間別に社会保険料への影響をシミュレーションしてみましょう。
- 基本給:20万円
- 残業単価:約2,000円/時間(時給換算)
- 勤務地:東京都、協会けんぽ、40歳未満
| 残業時間(月) | 残業代(月) | 4〜6月平均給与 | 標準報酬月額 | 月額保険料 | 年間負担増 |
|---|---|---|---|---|---|
| 0時間 | 0円 | 20万円 | 20万円 | 28,210円 | – |
| 10時間 | +2万円 | 22万円 | 22万円 | 31,031円 | +33,852円 |
| 20時間 | +4万円 | 24万円 | 24万円 | 33,852円 | +67,704円 |
| 40時間 | +8万円 | 28万円 | 28万円 | 39,494円 | +135,408円 |
表を見ると、残業時間が増えるほど社会保険料も増えることがわかります。
しかし、重要なのは「等級が変わるかどうか」です。
例えば、4〜6月の平均給与が21万円でも23万円でも、標準報酬月額は同じ「22万円」。
この場合、残業を少し減らしても保険料は変わりません。
逆に、等級の境目ギリギリの場合。
少しの残業代で等級が1つ上がり、年間数万円の負担増につながることもあります。
自分の給与がどの等級に該当するかを確認し、境目に近い場合は4〜6月の働き方を意識するとよいでしょう。
社会保険料を抑えるのに当月か翌月払いで「残業を控えるべき月」が違う
「4〜6月の残業を控えれば社会保険料が抑えられる」と思っている方は多いでしょう。
しかし、実はこれが当てはまらないケースもあります。
ポイントは、会社の給与が「当月払い」か「翌月払い」かという点です。
ここを間違えると、せっかく残業を控えても意味がなくなってしまいます。
当月払いの場合 → 4月・5月・6月の残業に注意
当月払いとは、その月に働いた分の給与がその月のうちに支給される仕組みです。
- 4月1日〜4月30日に働いた分 → 4月25日に支給
- 5月1日〜5月31日に働いた分 → 5月25日に支給
この場合、4月・5月・6月に発生した残業代が、そのまま4〜6月の支給給与に反映されます。
つまり、当月払いの会社に勤めている方は、「4月・5月・6月の残業」を意識すればOKです。
翌月払いの場合 → 3月・4月・5月の残業に注意
一方、翌月払いとは、その月に働いた分の給与が翌月に支給される仕組みです。
多くの企業がこの形式を採用しています。
- 3月1日〜3月31日に働いた分 → 4月25日に支給
- 4月1日〜4月30日に働いた分 → 5月25日に支給
- 5月1日〜5月31日に働いた分 → 6月25日に支給
この場合、4〜6月に「支給される」給与は、実際には3月・4月・5月に働いた分です。
つまり、翌月払いの会社に勤めている方は、「3月・4月・5月の残業」を意識する必要があります。
自分の会社はどちらか確認する方法
自分の会社が当月払いか翌月払いか、確認する方法は以下のとおりです。
【確認方法①】給与明細の「対象期間」を見る
給与明細には、その給与がいつの労働に対するものかが記載されています。
- 「4月分給与」と書かれていて、4月25日に支給 → 当月払い
- 「3月分給与」と書かれていて、4月25日に支給 → 翌月払い
【確認方法②】人事・経理担当者に聞く
給与明細だけではわかりにくい場合は、人事や経理の担当者に直接確認するのが確実です。
「定時決定の対象になる給与は、何月に働いた分ですか?」と聞けば、正確な情報を教えてもらえます。
【確認方法③】残業代の支給タイミングを確認する
残業代だけ翌月払いになっている会社もあります。
例えば、基本給は当月払いでも、残業代は翌月精算という場合。
残業代については3〜5月分が4〜6月支給に反映されます。
給与体系が複雑な場合は、必ず会社に確認しましょう。
【まとめ】注意すべき月の早見表
| 給与の支払い形式 | 残業を控えるべき月 |
|---|---|
| 当月払い | 4月・5月・6月 |
| 翌月払い | 3月・4月・5月 |
| 残業代のみ翌月払い | 3月・4月・5月(残業代部分) |
新しい社会保険料はいつから反映される?
4〜6月の給与をもとに社会保険料が決まることはわかりました。
では、実際に新しい保険料が給与から引かれるのはいつからなのでしょうか?
「急に手取りが減った」と感じる方の多くは、このタイミングを把握していません。
ここでは、反映時期の仕組みを詳しく解説します。
9月から新しい標準報酬月額が適用される
定時決定で決まった新しい標準報酬月額は、その年の9月から適用されます。
定時決定のスケジュール
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 4月〜6月 | 対象となる給与の支給期間 |
| 7月1日〜10日 | 会社が算定基礎届を届出 |
| 8月以降 | 新しい標準報酬月額が決定・通知 |
| 9月分から | 新しい標準報酬月額が適用開始 |
| 翌年8月分まで | 原則1年間、同じ標準報酬月額が継続 |
つまり、4〜6月の残業の影響は、9月から翌年8月までの原則1年間続くことになります。
たった3ヶ月の給与で1年間の保険料が決まるため、4〜6月の働き方が重要だと言われるのです。
実際に給与から引かれるのは「10月支給分」から(翌月控除の場合)
新しい標準報酬月額は9月分から適用されます。
しかし、実際に給与から天引きされるタイミングは会社によって異なります。
これは、社会保険料の「控除方法」が会社ごとに違うためです。
翌月控除の場合
多くの会社が採用している方式です。
9月分の社会保険料 → 10月支給の給与から控除
この場合、新しい保険料が実際に引かれるのは10月の給与明細からです。
当月控除の場合
一部の会社では、当月分の保険料を当月の給与から控除しています。
9月分の社会保険料 → 9月支給の給与から控除
この場合、新しい保険料が引かれるのは9月の給与明細からです。
自分の会社がどちらの方式か確認したい場合は、給与明細の「社会保険料」欄に記載されている対象月を見るか、人事・経理担当者に聞いてみましょう。
「9月から手取りが減った」と感じる理由
毎年9月〜10月頃になると、「なぜか手取りが減った」と感じる方が増えます。
その理由は、税金ではなく社会保険料の増加であることがほとんどです。
よくある勘違い
| 勘違い | 実際 |
|---|---|
| 「税金が上がったのでは?」 | 所得税・住民税は9月に急に上がることはない |
| 「会社が計算ミスした?」 | 定時決定による正しい処理の可能性が高い |
| 「何かの控除が増えた?」 | 社会保険料の定時決定が原因 |
- 4〜6月に残業が多く、給与が通常より高かった
- 標準報酬月額の等級が上がった
- 9月分から新しい(高い)保険料が適用された
- 10月支給の給与から新しい保険料が天引きされた
- 「あれ?手取りが減ってる」と気づく
このパターンに心当たりがある方は、4〜6月の給与明細と9月以降の給与明細を見比べてみてください。
社会保険料の欄が増えているはずです。
「残業すると損」は本当?社会保険料が上がるメリットも解説
「やっぱり4〜6月は残業しない方がいいのか」と思った方もいるかもしれません。
しかし、社会保険料が上がることは、デメリットばかりではありません。
実は、標準報酬月額が高くなることで受けられるメリットもあるのです。
「損」だけに注目せず、メリットも理解した上で判断しましょう。
メリット①:傷病手当金の受給額が増える
傷病手当金とは、病気やケガで会社を休んだときに、健康保険から支給される給付金です。
傷病手当金の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支給条件 | 業務外の病気・ケガで4日以上仕事を休んだとき |
| 支給額 | 標準報酬月額 ÷ 30 × 2/3(1日あたり) |
| 支給期間 | 最長1年6ヶ月 |
ポイントは、支給額が標準報酬月額をもとに計算されるという点です。
【具体例】標準報酬月額による受給額の違い
| 標準報酬月額 | 1日あたりの支給額 | 1ヶ月(30日)あたり |
|---|---|---|
| 20万円 | 約4,444円 | 約133,320円 |
| 26万円 | 約5,778円 | 約173,340円 |
| 30万円 | 約6,667円 | 約200,010円 |
標準報酬月額が20万円の人と26万円の人では、1ヶ月で約4万円もの差が生まれます。
長期間の療養が必要になった場合、この差は非常に大きくなります。
「万が一の保障」という意味では、標準報酬月額が高い方が安心と言えるでしょう。
メリット②:出産手当金の受給額が増える
出産手当金とは、出産のために会社を休んだときに、健康保険から支給される給付金です。
出産手当金の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支給条件 | 出産のために仕事を休み、給与が支払われないとき |
| 支給額 | 標準報酬月額 ÷ 30 × 2/3(1日あたり) |
| 支給期間 | 出産予定日前42日〜出産後56日(計98日間) |
傷病手当金と同様、標準報酬月額が高いほど受給額が増えます。
【具体例】標準報酬月額による受給額の違い(98日間)
| 標準報酬月額 | 1日あたりの支給額 | 98日間の総額 |
|---|---|---|
| 20万円 | 約4,444円 | 約435,512円 |
| 26万円 | 約5,778円 | 約566,244円 |
| 30万円 | 約6,667円 | 約653,366円 |
標準報酬月額が20万円の人と26万円の人では、出産手当金の総額が約13万円も違います。
出産を控えている方は、無理に社会保険料を下げようとしない方がよい場合もあります。
メリット③:将来の厚生年金受給額が増える
厚生年金保険料を多く納めると、将来受け取る老齢厚生年金の額も増えます。
現役時代の標準報酬月額が高いほど、将来もらえる年金も多くなる仕組みです。
【具体例】40年間加入した場合の年金額の違い
| 平均標準報酬月額 | 老齢厚生年金(年額・概算) | 月額換算 |
|---|---|---|
| 20万円 | 約526,000円 | 約43,800円 |
| 26万円 | 約684,000円 | 約57,000円 |
| 30万円 | 約789,000円 | 約65,800円 |
※上記は厚生年金部分のみ。国民年金(基礎年金)は別途支給されます。
標準報酬月額が高い期間が長いほど、年金額への影響は大きくなります。
「今払う保険料は将来の自分への投資」と考えることもできるでしょう。
【結論】短期的には損、長期的にはトントンorプラス
ここまでの内容を踏まえ、「4〜6月の残業を控えるべきか」の結論をまとめます。
判断基準
| あなたの状況 | おすすめの対応 |
|---|---|
| 手取りを少しでも増やしたい | 4〜6月(翌月払いは3〜5月)の残業調整を検討 |
| 近い将来、病気・ケガで休む可能性がある | 無理に残業を減らさなくてもOK |
| 出産を予定している | 無理に残業を減らさなくてもOK |
| 将来の年金を少しでも増やしたい | 無理に残業を減らさなくてもOK |
| 残業を自分でコントロールできない | 気にしすぎず、制度のメリットを理解しておく |
- 短期的(1年間):社会保険料が増える分、手取りは減る → やや損
- 長期的(将来):傷病手当金・出産手当金・年金が増える → トントン or プラス
「4〜6月に残業すると損」という話は、短期的な手取りだけを見れば正しいと言えます。
社会保険料は「掛け捨て」ではなく、将来の保障や年金として戻ってくるお金です。
自分のライフプランや健康状態を考慮し、残業を調整するか判断しましょう。
社会保険料を抑えたい人への具体的な対策
「メリットがあるのはわかったけど、やっぱり手取りを増やしたい」という方も多いでしょう。
ここでは、社会保険料を抑えるための具体的な対策を紹介します。
ただし、それぞれ注意点もあるため、しっかり理解した上で実践してください。
対策①:4〜6月(3〜5月)の残業を他の月に分散させる
最もシンプルな対策は、4〜6月(翌月払いの場合は3〜5月)の残業を減らし、他の月に分散させることです。
- 年度末(3月)の業務を前倒しして2月中に終わらせる
- 4〜6月に予定していた業務を7月以降に後ろ倒しする
- 繁忙期の残業が避けられない場合は、代休を4〜6月中に取得して総支給額を調整する
効果の目安
| 調整内容 | 効果 |
|---|---|
| 月5万円の残業代を減らす | 年間約6〜10万円の社会保険料削減 |
| 月3万円の残業代を減らす | 年間約3〜6万円の社会保険料削減 |
| 等級が1つ下がる程度の調整 | 年間約3万円前後の削減 |
ただし、残業を減らすと収入自体も減ることを忘れてはいけません。
「社会保険料を下げたいから残業しない」は、場合によっては本末転倒になります。
対策②:通勤手当の見直しを検討する
意外と見落としがちなのが、通勤手当(定期代)の支給タイミングです。
通勤手当は標準報酬月額に含まれます。
4〜6月にまとめて支給されると、その月の報酬が高くなるため注意が必要です。
注意が必要なケース
| ケース | 影響 |
|---|---|
| 4月に6ヶ月分の定期代がまとめて支給される | 4月の報酬が大幅に増え、標準報酬月額が上がる可能性 |
| 毎月定期代が支給される | 影響は平準化されるため、大きな問題なし |
- 会社に相談して、6ヶ月定期の支給月を4〜6月以外に変更できないか確認する
- 難しい場合は、毎月支給に切り替えられないか相談する
ただし、通勤手当の支給方法は会社の規定で決まっていることが多いです。
支給方法の変更が可能か、まずは人事・経理担当者に相談してみましょう。
対策③:随時改定で下がるケースもある
定時決定(年1回)以外にも、「随時改定」という仕組みで標準報酬月額が見直されることがあります。
以下の3つの条件をすべて満たした場合に適用されます。
- 固定的賃金(基本給・手当など)に変動があった
- 変動後3ヶ月間の平均報酬月額が、従前と比べて2等級以上の差がある
- 3ヶ月とも支払基礎日数が17日以上ある
- 昇給・降給で基本給が大幅に変わった
- 役職手当がなくなった
- 勤務形態の変更で固定給が下がった
【パート・アルバイト向け】4〜6月のシフトで社会保険料は変わる?
「4〜6月の給与で社会保険料が決まる」という話は、正社員だけの話だと思っていませんか?
実は、社会保険に加入しているパート・アルバイトも同じルールが適用されます。
ここでは、パート・アルバイトの方が知っておくべきポイントを解説します。
社会保険に加入しているパートは正社員と同じルール
パートやアルバイトでも、社会保険に加入している場合は定時決定の対象になります。
社会保険の加入条件(2024年10月以降)
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 週の所定労働時間 | 20時間以上 |
| 月額賃金 | 88,000円以上 |
| 雇用期間の見込み | 2ヶ月を超える |
| 学生 | 学生ではない(例外あり) |
| 勤務先の規模 | 従業員51人以上の企業 |
※従来のルール(週30時間以上または正社員の3/4以上)で加入している方も対象です。
社会保険に加入している場合、4〜6月の給与をもとに標準報酬月額が決まり、9月から新しい保険料が適用されます。
つまり、「パートだから関係ない」ということはありません。
支払基礎日数(出勤日数)に注意
パート・アルバイトの場合、正社員とは少し違うルールがあります。
それが**「支払基礎日数」**です。
定時決定では、4〜6月のうち支払基礎日数が一定以上の月のみが計算対象になります。
支払基礎日数のルール
| 雇用形態 | 対象となる月の条件 |
|---|---|
| 一般的なパート(3/4基準で加入) | 支払基礎日数が17日以上の月 |
| 短時間労働者(週20時間以上で加入) | 支払基礎日数が11日以上の月 |
【具体例】支払基礎日数による影響
例えば、一般的なパート(17日基準)の方が以下のような出勤状況だったとします。
| 月 | 出勤日数 | 給与 | 対象になるか |
|---|---|---|---|
| 4月 | 15日 | 12万円 | ✕(17日未満) |
| 5月 | 18日 | 15万円 | ○ |
| 6月 | 14日 | 11万円 | ✕(17日未満) |
この場合、5月の給与(15万円)だけで標準報酬月額が決まります。
たまたま1ヶ月だけ出勤日数が多く、給与も高かった場合。
その月の給与だけで1年間の保険料が決まってしまうのです。
GW・繁忙期にシフトを増やすと1年間影響する可能性
パートやアルバイトの場合、4〜6月にシフトを増やしすぎると損する可能性があります。
- GW期間中にシフトを多く入れた(5月の給与が増加)
- 年度初めの繁忙期で出勤日数が増えた(4月の給与が増加)
- 他のスタッフの代わりに多くシフトに入った
このような場合、4〜6月だけ給与が高くなります。
そして9月以降の原則1年間、高い社会保険料を払い続けることになりかねません。
対策
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| シフトを分散させる | 4〜6月に集中させず、7月以降に調整 |
| 出勤日数を意識する | ※17日(または11日)を超えないようにする |
| 事前に計算する | 給与がどの等級に該当するか確認しておく |
もちろん、シフトを減らすと収入も減るため、バランスを考えて判断することが大切です。
(※ただし3か月とも基準未満の場合は従前で決定される場合あり)
扶養内で働く場合は関係ない
一方、社会保険に加入していないパート・アルバイトの場合。
この場合は、定時決定のルールは関係ありません。
扶養内で働く方の社会保険
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 健康保険 | 配偶者の扶養に入っている(自分で保険料を払わない) |
| 厚生年金 | 加入していない(国民年金第3号被保険者) |
| 定時決定 | 対象外 |
扶養内で働いている方は、4〜6月にシフトを増やしても社会保険料には影響しません。
ただし、年収が130万円(または106万円)を超えると扶養から外れる可能性があります。
そのため、別の意味で働き方に注意が必要です。
【まとめ】パート・アルバイトの方への早見表
| あなたの状況 | 4〜6月ルールの影響 |
|---|---|
| 社会保険に加入している | 影響あり(正社員と同じ) |
| 扶養内で働いている | 影響なし |
| 最近社会保険に加入した | 影響あり(仕組みを理解しておく) |
自分がどちらに該当するかわからない場合は、給与明細を確認するか、勤務先に確認しましょう。
「健康保険料」「厚生年金保険料」が引かれていれば、社会保険に加入しています。
例外ケース:産休・育休・休職中の場合、社会保険料はどうなる?
「4〜6月に休んでいた場合はどうなるの?」という疑問を持つ方も多いでしょう。
産休・育休中の方、休職中の方、繁忙期がある業種の方など、通常とは異なるケースについて解説します。
産休・育休中は社会保険料が免除される
産休・育休中の方は、届出をすることで社会保険料が免除されます。
免除の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象期間 | 産前産後休業期間 + 育児休業期間 |
| 免除される保険料 | 健康保険料・厚生年金保険料(本人負担分・会社負担分の両方) |
| 届出 | 会社が「産前産後休業取得者申出書」「育児休業等取得者申出書」を届出 |
| 年金への影響 | 免除期間も年金額の計算に含まれる(将来の年金が減らない) |
産休・育休中は、そもそも社会保険料を支払う必要がありません。
そのため、4〜6月に産休・育休を取得していた場合、定時決定を気にする必要はほとんどないと言えます。
ただし、届出をしないと免除されません。
会社の人事担当者に届出が完了しているか確認しておきましょう。
育休終了後は「育児休業等終了時改定」で見直し可能
育休から復帰した後、時短勤務などで給与が下がった場合は、定時決定を待たずに標準報酬月額を下げることができます。
これを**「育児休業等終了時改定」**といいます。
適用条件
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 育児休業等を終了した3歳未満の子を養育する被保険者 |
| 条件 | 帰後3ヶ月間の報酬平均が、従前より1等級以上下がっている |
| 届出 | 会社が「育児休業等終了時報酬月額変更届」を届出 |
| 適用時期 | 育休終了日の翌日から起算して4ヶ月目から |
- 育休前の標準報酬月額:26万円
- 育休復帰後(時短勤務)の給与平均:18万円
- 標準報酬月額を20万円に下げることが可能
育休から復帰して「給与は下がったのに社会保険料が高いまま」と感じている方は、この制度を利用できるか会社に確認してみましょう。
休職中で給与がなかった場合
病気やケガなどで休職し、4〜6月に給与がほとんどなかった場合はどうなるのでしょうか。
【支払基礎日数が17日未満の月がある場合】
定時決定では、支払基礎日数が17日未満の月は計算から除外されます。
| 4〜6月の状況 | 標準報酬月額の決まり方 |
|---|---|
| 3ヶ月とも17日以上 | 3ヶ月の平均で決定 |
| 1〜2ヶ月だけ17日以上 | 17日以上の月のみで平均を算出 |
| 3ヶ月すべて17日未満 | 従前の標準報酬月額を継続 |
- 4月:休職(給与なし、支払基礎日数0日)
- 5月:休職(給与なし、支払基礎日数0日)
- 6月:復帰(給与15万円、支払基礎日数10日)
この場合、3ヶ月すべて17日未満のため、、従前の標準報酬月額がそのまま継続されます。
休職中で給与がなかったからといって、標準報酬月額が極端に下がるわけではない点に注意しましょう。
繁忙期がある業種の特例(保険者算定・年間平均)
引越し業、観光業、農業など、4〜6月が繁忙期で給与が高くなる業種もあります。
このような場合、通常の定時決定では不公平が生じるため、「年間平均」で算定できる特例が設けられています。
【保険者算定(年間平均)の条件】
以下のすべてを満たす場合に申請できます。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| ① | 通常の算定(4〜6月平均)と年間平均の差が2等級以上ある |
| ② | この差が業務の性質上、例年発生すると認められる |
| ③ | 被保険者本人の同意がある |
- 前年7月〜当年6月までの12ヶ月間の報酬平均を使用
- 4〜6月の平均報酬:35万円 → 標準報酬月額36万円(24等級)
- 年間平均報酬:28万円 → 標準報酬月額28万円(21等級)
- → 3等級の差があるため、年間平均での算定を申請可能
この特例を利用したい場合は、会社を通じて届出が必要です。
毎年繁忙期の影響で社会保険料が高くなっている方は、人事担当者に相談してみましょう。
4月から6月の社会保険料に関するよくある質問4つ
社会保険料と4〜6月の給与について、よく寄せられる質問をまとめました。
一般的な夏・冬のボーナス(年2回支給)は、標準報酬月額の計算には含まれません。
ただし、賞与には別途「標準賞与額」に基づく社会保険料がかかります。
これは賞与支給時に天引きされるもので、定時決定とは別の仕組みです。
【注意】 業績給やインセンティブなどが年4回以上支給される場合は、賞与ではなく「報酬」として扱われ、標準報酬月額の計算に含まれます。自社の賞与支給回数を確認しておきましょう。
有給休暇は「支払基礎日数」にカウントされます。
つまり、有給を取得した日も出勤した日と同じ扱いになります。
有給休暇中も給与は通常どおり支給されるため、有給を多く取っても標準報酬月額は下がりません。
社会保険料を下げるには、有給休暇ではなく、残業代など報酬自体を減らす必要があります。
定時決定の対象外となる場合もあります。
【入社時期による違い】
| 入社時期 | 標準報酬月額の決まり方 |
|---|---|
| 5月31日以前に入社 | 定時決定の対象(4〜6月の給与で決定) |
| 6月1日以降に入社 | 定時決定の対象外(資格取得時決定が翌年8月まで適用) |
6月1日以降に入社した場合、入社時に届け出た「見込み報酬月額」で標準報酬月額が決まります。
基本的に、翌年の定時決定まで変わりません。
転職を予定している方は、入社時期によって社会保険料の決まり方が異なることを覚えておきましょう。
| 項目 | 定時決定 | 随時改定 |
|---|---|---|
| 時期 | 毎年7月(9月から適用) | 随時(条件を満たしたとき) |
| 対象 | 7月1日現在の全被保険者 | 固定給が大きく変動した人 |
| 条件 | 4〜6月の給与平均 | 固定給の変動+2等級以上の差+3ヶ月連続 |
| 変動する報酬 | 残業代を含むすべての報酬 | 固定的賃金のみ(残業代は対象外) |
随時改定は、基本給や役職手当などの固定的賃金が変わった場合に適用されます。
「4〜6月にたまたま残業が多かった」という場合は、随時改定の対象にはなりません。
残業代は変動的賃金であり、固定的賃金には含まれないためです。
まとめ:4から6月の働き方で社会保険料は変わる!ただし「損」だけではない
最後に、この記事のポイントをまとめます。
記事の要点
- 社会保険料は4月・5月・6月の給与の平均で決まる(定時決定)
- 新しい保険料は9月から翌年8月まで1年間適用される
- 残業代が増えると標準報酬月額が上がり、社会保険料も増える
- 翌月払いの会社は3月・4月・5月の残業に注意が必要
- パート・アルバイトでも社会保険に加入していれば同じルールが適用
- 社会保険料が上がると傷病手当金・出産手当金・将来の年金も増える
- 産休・育休中は社会保険料が免除される
- 繁忙期がある業種は年間平均での算定特例が使える場合もある
「残業を控えるべきか」の最終結論
| あなたの状況 | 結論 |
|---|---|
| 手取り重視で1円でも多く残したい | 4〜6月(翌月払いは3〜5月)の残業調整を検討 |
| 万が一の保障を重視したい | 無理に残業を控えなくてOK |
| 出産を予定している | 残業を控えると出産手当金が減る可能性あり |
| 将来の年金を重視したい | 保険料を多く払う=年金が増える |
| 残業を自分でコントロールできない | 気にしすぎず、制度のメリットを理解しておく |
社会保険料は「取られるだけのお金」ではなく、将来の自分や家族を守るための保障でもあります。
仕組みを正しく理解した上で、自分に合った働き方を選んでいきましょう。
