COLUMN
お役立ちコラム
2020.11.05
リードブレーン株式会社
テーマ:
取締役が危篤状態である場合、一時取締役を選任しなければならないか?
事例
当社は取締役会設置会社ですが、取締役の1人が急遽病に倒れ、危篤状態となってしまいました。会社法においては一時取締役という制度があるそうですが、このような場合、一時取締役を選任しなければならないのでしょうか。
ポイント
実務解説
取締役の1人が危篤状態であっても、それだけでは一時取締役を選ぶ必要はなく、選ぶこともできません。危篤状態の取締役を除くと、取締役に役員が生じる場合で、後任の取締役がすぐには選任できない場合に限り、一時取締役の選任を裁判所に申し立てることができます。
一時取締役とは
一時取締役とは、株式会社の①取締役が欠けた場合、又は②会社法若しくは定款で定めた取締役の員数が欠けた場合(取締役に欠員が生じた場合)に、裁判所が必要があると認める時に、利害関係人の申立てにより選任するものです(会社346②)。実務上、仮取締役と呼ばれることもあります。
取締役の退任によって欠員が生じたときには、会社は遅滞なく株主総会において後任の取締役を選任しなければなりません(会社329・976二十二)。しかし、後任の取締役を選任するためには若干の日時を有することから、会社法は、取締役が任期の満了又は辞任によって退任し、取締役に欠員が生じたときは、退任取締役は後任の取締役が就任するまで取締役の権利義務を有することとしています(会社346①)。
もっとも、後任の取締役がすぐには選任できないにも関わらず、退任取締役が引き続き取締役の職務を継続することが不可能又は不適当な場合、例えば、①取締役が死亡・後見開始・健康上の理由等により退任した場合、②任期満了・辞任により退任した取締役に不正行為があった場合、③取締役が解任された場合等には、利害関係人が一時取締役の選任を裁判所に申し立てることができます。
取締役の1人が危篤状態の場合
ここで、取締役の1人が危篤状態の場合においても、当該取締役を除いても取締役に欠員が生じない場合には、一時取締役を選ぶ必要はなく、かつ法定の要件を満たさないことから、一時取締役を選ぶことができません。そこで、後任の取締役を選任したい場合には、通常どおり株主総会を開催することとなります(会社329①)。また、取締役に欠員が生じる場合でも、株主総会を開催し後任の取締役がすぐに選任できる場合も同様です。
しかし、危篤状態の取締役を除くと取締役に欠員が生じる場合において、後任の取締役がすぐには選任できない場合には、退任取締役が引き続き取締役の職務を継続することが不可能な場合に準じ、一時取締役の選任を申し立てることができると解されます。
次回、『職務代行者を選任することができる場合』についてご紹介していきます。