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2020.06.26

リードブレーン株式会社

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2020年4月1日から債権法(民法の契約などに関する部分)が変わります!

2017 年(平成 29 年)5月に成立した「民法の一部を改正する法律」が 2020 年4月1日から施行されます。民法には契約等に関する最も基本的なルールが定め    られており,この部分は「債権法」などと呼ばれます。

この債権法については 1896 年(明治 29 年)に制定されてから約 120 年間にわたり実質的な見直しがほとんど行われていませんでした。

今回の改正では,①約 120 年間の社会経済の変化への対応を図るために実質的にルールを変更する改正と,②現在の裁判や取引の実務で通用している基本的なルールを法律の条文上も明確にし,読み取りやすくする改正を行っています。

約120年間の社会経済の変化への対応(実質的なルールの改正)

1   保証人の保護に関する改正

保証契約に関するルールについて,個人(会社などの法人は含まれません)が保証人になる場合の保証人の保護を進めるため,次のような改正をしています。

(1)極度額の定めのない個人の根保証契約※は無効に

※一定の範囲に属する不特定の債務を保証する契約を「根保証契約」といいます。例えば,住宅等の賃貸借契約の保証人となる契約などが根保証契約に当たることがあります。
個人が根保証契約を締結する場合には, 保証人が支払の責任を負う金額の上限となる「極度額」を定めなければ,保証契約は無効となります。

(2)公証人による保証意思確認の手続を新設

会社や個人である事業主が融資を受ける場合に,その事業に関与していない親戚や友人などの第三者が安易に保証人になってしまい,結果的に,予想もしなかった多額の支払を迫られるという事態が依然として生じています。そこで,個人が事業  用融資の保証人になろうとする場合について,公証人による保証意思確認の手続を新設しています。この手続を経ないでした保証契約は無効となります()。

この手続では,保証意思宣明公正証書を作成することになります。これは代理人 に依頼することができず,保証人になろうとする者は自ら公証人の面前で保証意思 を述べる必要があります。

※次の場合には,意思確認は不要です。
①主債務者が法人である場合 その法人の理事,取締役,執行役や,議決権の過半数を有する株主等
②主債務者が個人である場合 主債務者と共同して事業を行っている共同事業者や,主債務者の事業に現に従事している主債務者の配偶者

2   約款(定型約款)を用いた取引に関する改正

現代の社会では,不特定多数の顧客を相手方として取引を行う事業者などがあらかじめ詳細な契約条項を「約款」として定めておき,この約款に基づいて契約を締結することが少なくありません。
このような約款を用いた取引においては,顧客はその詳細な内容を確認しないまま契約を締結することが通例となっています。しかし,民法には約款を用いた取引に関する基本的なルールが何も定められていませんでした。今回の改正では,このような実情を踏まえ,新たに,「定型約款」に関して,次のようなルールを新しく定めています。

(1)定型約款が契約の内容となる要件 

顧客が定型約款にどのような条項が含まれるのかを認識していなくても,①当事者の間で定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたときや,②定型約款を契約の内容とする旨をあらかじめ顧客に「表示」して取引を行ったときは,個別の条項について合意をしたものとみなされます。他方で, 信義則に反して顧客の利益を一方的に害す る不当な条項はその効果が認められません。

(2)定型約款の変更の要件

現在の実務では,事業者が既存の契約も含めて一方的に約款の内容を変更することがあります。今回の改正では,定型約款の変更がどのような要件の下で可能なのかについて新たにルールを設けています。

定型約款の変更は,①変更が顧客の一般の利益に適合する場合や,②変更が契約   の目的に反せず,かつ,変更に係る諸事情に照らして合理的な場合に限って認めら  れます。顧客にとって必ずしも利益にならない変更については,事前にインターネッ トなどで周知をすることが必要です。

※変更が合理的であるかどうかを判断する際には,変更の必要性,変更 後の内容の相当性,変更を予定する旨の契約条項の有無やその内容, 顧客に与える影響やその影響を軽減する措置の有無などが考慮されます。
※約款中に「当社都合で変更することがあります」と記載してあっても, 一方的に変更ができるわけではありません。

3   法定利率(※)に関する改正

※民法には,契約の当事者間に貸金等の利率や遅延損害金(金銭債務の支 払が遅れた場合の損害賠償)に関する合意がない場合に適用される利率 が定められており,これを「法定利率」といいます。例えば,交通事故 などを原因とする不法行為に基づく損害賠償における遅延損害金は法定 利率によります。このほか,被害者の逸失利益を算定するに当たって, 将来収入から運用可能益等を控除する(中間利息控除)際にも利用され ます。

極めて低金利の状態が長く続いている現状に照らすと,法定利率が高すぎるため,不公平を生じているとの指摘がされています。
そこで,今回の改正では,法定利率を年5%から年3%に引き下げています。また,将来的に法定利率が市中の金利動向と大きく離れたものになることを避けるため,市中の金利動向に合わせて法定利率が自動的に変動する仕組みを新たに導入しています。

4   消滅時効(※)に関する改正

※「消滅時効」とは,債権者が一定期間権利を行使しないことによって債 権が消滅するという制度をいいます。長期間が経過すると,証拠が散逸し, 債務者であるとされた者が債務を負っていないことを立証することも困 難になるため,このような制度が設けられていると言われています。

民法は消滅時効により債権が消滅するまでの期間(消滅時効期間)は原則 10 年であるとしつつ,例外的に,職業別のより短期の消滅時効期間(弁護士報酬は2年,医師の診療報酬は3年など)を設けていました。今回の改正では,消滅時効期間について,より合理的で分かりやすいものとするため,職業別の短期消滅時効の特例を廃止するとともに,消滅時効期間を原則として5年とするなどしています。

※ただし,債権者自身が自分が権利を行使することができることを知らな いような債権(例えば,債権者に返済金を過払したため,過払金の返還を求める債権については,過払いの時点では,その権利を有することがよく分からないことがあります。)については,権利を行使することができる時から「10 年」で時効になります。

民法のルールをより分かりやすいものとする

裁判や取引の実務で通用している基本的なルールであるものの,民法の条文には明記されていなかったものを明文化する改正を多数行っています。
例えば,次のようなルールが条文に明記されています。

1   意思能力に関するルール

交通事故や認知症などにより意思能力(判断能力)を有しない状態になった方がした法律行為(契約など)は無効であることは,判例で認められており,確立したルールです。高齢化社会の急速な進展に伴い,重要性も増しています。しかし,民法にはこのことを定めた規定があ  りませんでした。そこで,このルールを条文に明記しています。

2   賃貸借に関するルール

賃貸借に関しては,敷金をやりとりするという実務が広く形成されています。また,賃貸借の終了に際しては,借主が原状回復をする必要がありますが,どのような範囲で原状回復が必要かについて紛争が生ずることも少なくありません。

しかし,民法には敷金や原状回復についての基本的なルールを定めた規定がありませんでした。
そこで,次のような確立したルールを条文に明記しています。

❶    敷金については

賃貸借が終了して賃貸物の返還を受けたときに,貸主は賃料などの債務の未払分を差し引いた残額を返還しなければなりません。

❷    賃貸借の借主は

通常損耗(賃借物の通常の使用収益によって生じた損耗)や経年変化につい  ては原状回復をする必要はありません。

 

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