COLUMN

お役立ちコラム

2018.10.27

リードブレーン社会保険労務士法人

テーマ:

【コラム】職場でありがちなトラブル事例③

知らぬ間に退職金規定変更 自己都合なら不支給に!?

 

 賃金等の低下を理由に、従業員が退職願を提出したところ、「退職金はゼロ」といわれてビックリ仰天です。実は6年前に就業規則が改正され、「自己都合については退職金は支給しない」というルールに変わっていたのです。

 当然、納得を得られるはずがありません。従業員側の主張は2点です。第1に、労働条件の悪化を理由とする退職なので、会社都合として扱うべき。第2に、退職金の金額は変更前の規定に基づいて計算すべきというものです。

 対応に窮した事業主が、都道府県労働局にあっせんを申請しました。

 

従業員の言い分

 退職金規定の変更は「寝耳に水」で、退職願を出した後で初めて知らされました。

 今回の退職は、当方の私的な理由に基づくものではありません。会社は賃下げ、歩合給制の導入など労働条件を引き下げる一方で、退職勧奨も行っていました。そのような形で、従業員側が辞めざるを得ないような状況に追い込んでおきながら、自己都合退職とみなすなど、とんでもない話です。

 変更前の退職金規定に基づき、「基本給(20万円)×勤続年数(14年)×支給率(0.5)=140万円」の支払いを要求します。

 

事業主の言い分

 退職金規定の変更は、定年制導入に伴って制度全体の整備を図ったものです。今回退職の従業員も含め、誰からも異論がなかったので、同意は得られたものと理解しています。

 会社業績の悪化から、賃金制度の見直しも進めてきましたが、退職を強要した事実はありません。事業主としては、あくまで自発的離職と受け止めています。

 

あっせんの内容

 2つの論点のうち、第1点(会社都合退職であるか否か)については、従業員に対して「自ら退職願を提出していることから、会社都合という判断は難しい」と伝えました。

 第2点(規則改正の成否)については、事業主に対して「就業規則の変更に際し、代償措置もなく、説明手続きも不十分なため、無効とみなされる可能性が高い」と説明しました。

 両者には、お互いに譲歩して、合意点を探るようにアドバイスしました。

 

結果

 変更前の退職金規定に基づき、自己都合退職として計算した額(会社都合の半額、70万円)を支払う旨の、合意文書の作成が行われました。


会社の経営状態によって、労働条件が従業員にとって不利な方向に変更されてしまうことは

仕方がないとしても、従業員への十分な説明は必要ですね。

 

 

ピックアップ