COLUMN
お役立ちコラム
2020.03.06
リードブレーン株式会社
テーマ:
【コラム】家族経営の会社に適した機関設計とは?
家族経営の会社に適した機関設計とは?
事例
当社は、私の父である先代の社長が設立した株式会社で、父亡き後、私が社長となって経営を建て直し、私の妻と妻の弟(義弟)が取締役、私の母が監査役になっています。義弟が当社の取締役に就任したのは、会社を建て直す際に資金援助を受けたという経緯がありますが、義弟は別の会社でサラリーマンをしており、全く経営にはタッチしていません。当社の機関設計がこのままでよいのか疑問です。どのような機関設計がふさわしいのでしょうか。
ポイント
実務解説
会社の実態からすれば、定款変更により、株主総会と取締役1名とする機関構成の会社にするのがふさわしいといえるでしょう。
最もシンプルな機関設計
会社法では、株式会社と有限会社を非公開会社(全株式譲渡制限会社)に統合し、非公開会社であれば、株主総会と取締役1名とする機関設計の株式会社も可能となりました(会社295①・326①)。本事例では、相談者が会社経営の実質を担っており、相談者の妻やその弟、相談者の母は名目的な存在、すなわち会社法制定前の株式会社における員数合わせとも解されます。とすれば、実態に合わない機関を存続させておくより実態に合った株主総会と取締役1名とする機関設計にした方がよいとも考えられます。もっとも、相談者の義弟は、出資しており、その金額ないし持株比率の関係や会社経営に対する理解度、相談者との人間関係などから先々利害対立が生じないとも限りません。そこで、義弟を取締役から外すことが難しい場合、義弟の持株を買い取るなどの処理を考えざるを得ない事態も考えられます。
機関設計上検討すべき事項
株主総会と取締役1名という機関設計にすれば、員数合わせのようなこと(会社331⑤)をせずに済み、取締役会決議の瑕疵などに煩わされることもなく、機動的な経営が法的に実現できるメリットは大きいと考えられます。しかし、他方で、複数の株主がいれば、1名のみの取締役が経営の実権を握っていると、専横の危険もあり、業績が好転しても悪化してもトラブルの種になりかねません。複数の取締役がいてもまた監査役がいても、いずれも身内の者であれば、牽制が効果的に発揮されるか、また外部からみて牽制が効いていると見てもらえるかという問題もあります。さらに、機関設計を変更することが、経営のトップにとって好ましくない役員を排除するためと受けとられかねない場合もあり得るでしょう。
従前の機関設計からバリエーションを検討
相談者の義弟との関係から株主総会と取締役1人という機関設計への定款変更が難しい場合、義弟を取締役としたまま、あるいは、監査役となってもらうなど、その会社に適合した機関構成を会社経営の健全性、効率性から考えていくべきでしょう。
前述のとおり取締役が1名の場合、機動的な意思決定ができるメリットはありますが、さまざまな処理を一人でやらなければならず、その分の手間や時間がかかってくるという難点もあるでしょう。