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2019.09.18
リードブレーン株式会社
テーマ:
【コラム】定款に記載する設立費用の範囲は?
定款に記載する設立費用の範囲は?
事例
オフィス用品販売の株式会社の設立を計画しており、設立のために様々な費用がかかります。発起人である私が立て替えた費用は、会社設立後に会社に請求しようと考えています。定款に記載しなければ会社の負担とすることはできないと聞きましたが、どのような費用を定款に記載することができるのでしょうか。
ポイント
実務解説
会社が成立した後、その設立のために必要な費用を会社負担とするには、一定の例外を除き、定款に記載されなければなりません(会社28四)。また、上記の手続により会社負担とすることのできる設立費用は、設立事務の執行のために必要な費用を意味し、いわゆる開業準備費用は含まれません。
設立費用を定款に記載する趣旨
会社を設立するには、例えば設立事務所の賃料、設立事務員の給与、創立総会の会場費など様々な費用がかかりますが、会社が成立するまでは当該会社を取引の当事者とすることはできず、いったんは発起人が負担することになります。これら費用を無制限に成立後の会社に請求できるとすると、濫用された場合等には会社の財産が危うくなります。そこで、会社法は、金額に客観性があり濫用のおそれのないもの(定款の認証手数料・印紙税、払込取扱金融機関に支払う手数料・報酬(会社34②・64)、検査役に対する報酬(会社33③)及び設立登記のための登録免許税額)を除き、定款に記載しなければ効力を生じないこととしています(会社28四、会社規5。)
設立費用に該当するもの
定款に記載することにより成立後の会社に対し請求できる設立費用は、設立事務の執行のために必要な費用をいいます。具体的には、設立事務所の賃料・水道光熱費、設立事務員の給与・交通費、設立事務のために用いる事務用品費、株主募集の広告費、創立総会の費用、会社法33条10項3号の弁護士等の証明に要する費用等があります。株券の印刷費用については消極説と積極説があります。
設立費用に該当しないもの
会社の設立それ自体に必要とはいえない開業準備の費用は、設立費用に当たりません。例えば、会社の工場敷地の買収、製造機械の費用、仕入れた材料の代金などは、設立費用には該当しません。 なお、上記の開業準備行為のうち、発起人が会社のため会社の成立後に特定の財産を譲り受けることを約束し(これを「財産引受け」といいます。)、その目的たる財産、価格、譲渡人の氏名・名称を定款に記載した場合には、会社負担とすることができます(会社28二)。
本事例のケースで、例えば開業後に販売するために仕入れたオフィス用品の代金や、開業後に営業車として利用するために購入した代金は設立費用には該当しませんが、後者については上記の財産引受けとしての要件を満たせば、発起人が会社のためにディーラーから購入した車両の代金を会社負担とすることができます。
定款は変更する際も費用がかかってきますので、間違いのないよう記載範囲をよく確認しましょう。